知財高裁令和6年(ネ)第10086号 意匠権侵害差止等請求控訴事件
(原審:東京地裁令和3年(ワ)第20229号)
2025年7月
逆 転 勝 訴 判 決!!
(令和7年6月26日 判決)
❒ 弁理士法人 藤本パートナーズ受任事件(被告)
1.原 審
原審である東京地方裁判所において、令和6年10月30日の判決(令和3年(ワ)第20229号)において、被告が原告の意匠権を侵害する(意匠が類似する)ため、差止請求が認められるとともに損害賠償が認められた。
本判決において、被告が販売する商品・「収納容器」が原告の登録意匠に類似するとして意匠権侵害が認められた。
2.控訴理由
(1)しかるに、被告の補佐人である弁理士 藤本 昇は原審の類否判断は明らかに不当であるとして、本件事件を控訴した。
(2)原審判決の不当理由は、第1に意匠のみかた(観察手法)が誤っている、第2に具体的構成態様④の認定が誤っている、第3に意匠の要部認定が誤っていることを主たる根拠として原審の取り消しを求めて控訴したのである。
3.控訴審判決(令和7年6月26日)
控訴審である知的財産高等裁判所は、前記被告補佐人である弁理士 藤本 昇の主張を略全面的に認め、原判決が判示した登録意匠と被告商品とは類似するとの判断を取り消し非類似と判断し、その結果、被告の行為は意匠権を侵害しないと判示した歴史的判決を下したのである。
4.控訴審判決から学ぶ点
本件控訴審判決から学ぶ点は種々あるが、主たる点は下記点にある。
(1)原審の判決を不当であると判断し、その取り消しを徹底的に争う姿勢が被告(特に補佐人の弁理士 藤本 昇)にあったこと。
(2)原審の判決は意匠の類否判断において次のような重大な誤りがあると判断し、その取り消しを求めたこと。
ⓐ 意匠のみかた(観察手法)の誤り
原審は、本件意匠に係る物品である「収納容器」は、ほとんどの商品が斜め上方から観察するとして、正面視、側面視の形状を低く評価した点は明らかに誤った判断で、意匠としては正面視・側面視を中心に全体観察すべきであると主張し、これが認められた点。すなわち物品の性質、用途、使用態様を考慮した意匠のみかたに誤りがあった点。
ⓑ 具体的構成態様④の認定の誤り
原審認定の具体的構成態様④は、公知意匠を参酌すると本件登録意匠の認定としては誤りであることを主張し、より具体的に構成態様④として特定したこと。
ⓒ 意匠の要部
原審においても本件登録意匠の要部を基本的構成態様と具体的構成態様との組み合わせにあると認定したが、その組み合わせた具体的構成態様④について前記のように構成態様認定に原審には誤りがあることから、原審の要部認定にも誤りがあると主張したのである。
その結果、控訴審では意匠の要部認定の相違とともに被告商品には本件登録意匠の要部を具備していないことを理由に類似しないと結論づけたのである。
5.原審の判決が控訴審で取り消された意匠権侵害訴訟はほとんど前例がないため、本件は歴史的な判決となったのである。
歴 史 的 判 決