職務発明制度の法改正についてのお知らせ
(特許法等の一部法改正)
各位
2015年11月
サン・グループ 代表
藤本昇特許事務所 所長
弁理士 藤本昇
貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
今般、特許法等の一部改正があり、該改正中、企業にとって重要な職務発明に関する規定が改正されましたので、お知らせいたします。
1.改正法
特許法等の一部を改正する法律が本年7月10日公布済でありますが、本改正法は平成27年7月10日から起算して1年以内に施行(平成28年春頃の予定)されますが、今回の改正の概要として①職務発明制度の見直し、②特許・商標・国際出願等の料金値下、③特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約の実施のための規定の整備が主たる改正内容である。今回の法改正中、企業にとって最重要テーマが職務発明制度の改正にあり、この改正法により企業が社内の職務発明規程等を見直す必要がありますので、予めお知らせします。
2.職務発明制度の改正のポイント
(1)職務発明に係る特許を受ける権利を使用者(会社)帰属とすることができること
(特許法35条3項)
現行特許法においては、職務発明(従業者等の発明)に係る特許を受ける権利は従業者等に帰属する(特許法35条)ことになっていたためその特許を受ける権利を会社に帰属する場合には従業員等から譲り受けなければならなかった。しかしながら、今回の改正により、従業員等の職務発明に関する特許を受ける権利を初めから会社帰属とすることが可能となりました。但し、会社帰属は法律上当然になるのではなく社内の職務発明規程において予め使用者等(会社)に特許を受ける権利が帰属すると規定しなければなりませんので要注意です。さらに職務発明に関する特許を受ける権利を会社に帰属させるか、現行のように従業員に帰属させるかは何れかを会社が選択することも可能ですので会社側で職務発明規程により選択規定して下さい。
(2)従業者等が相当の利益を受ける権利を有する(特許法35条4項)
今回の改正法によって、社内規程で職務発明について会社に特許を受ける権利を移行させた場合には、従業者等は相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有すると定められたため、会社としては利益を支払わなければならない義務が発生します。但し利益には単に金銭のみではなく、研究費用、研究設備、処遇、顕彰等も含まれます。
問題は、「相当の利益」とはどのくらいなのかということですが、これは改正前の「相当な対価」として職務発明規程に定めた内容に相当すると考えてよい。但し相当の利益が不合理か否かはその規定を定めた手続面が重視されることとなります。
(3)相当の利益の内容決定の手続(特許法35条6項)
相当の利益を定める場合に使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況等に関する事項については経済産業大臣がガイドラインを定めて公表することが条文に明記されました。このガイドラインの概要としては、①相当の利益を定める基準策定に際し使用者等と従業者等との協議、②策定された基準の開示、③従業員等からの意見の聴取等適正な手続やその目的について定められるものと思われる。
3.改正職務発明制度に対する企業の今後の対策
(1)職務発明に係る特許を受ける権利を会社に帰属させるべきか否かの早急の方針決定
(2)現在の職務発明規程を改正するのか、新たに新設するのか検討の要あり
(3)改正法は来年の春頃施行される予定であるが、法律の施行日以降に完成した職務発明について改正法が適用されるため、事前に職務発明規程等を整備しておくことが重要です。
4.むすび
職務発明規程が既に存在する企業、あるいは規定自体存在していない企業も含め、今後の社内コンプライアンスとの関係上見直し検討して下さい。
尚、不明な点等は藤本昇特許事務所に御相談下さい。
【本件に関するお問合せ】
藤本昇特許事務所 所長 弁理士 藤本昇
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