2022年5月
各位
弁理士法人 藤本パートナーズ
代表 弁理士 藤本 昇
1.材料メーカーの日本製鉄がトヨタ自動車を訴える!
(1)ハイブリッド車の部品などに使用される電磁鋼板の特許権者である日本製鉄が、該鋼板のメーカーである
中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄と該鋼板をハイブリッド車の部品に使用しているトヨタ自動車を提訴した。
(2)通常、競合企業である鋼板メーカーを提訴するのが一般的であるが、該鋼板を自動車部品として使用して
いるトヨタ自動車を提訴することは一般的ではない。けだし日本製鉄にとってはトヨタ自動車が取引先に
なる可能性があるからである。
2.商社が提訴される!
(1)本件においては、2021年10月東京地裁に宝山鋼鉄とトヨタ自動車が提訴されたが、その後該宝山鋼鉄と
トヨタ自動車の取引を仲介する商社である三井物産が提訴された。
(2)一般的に商社はその商品の仲介人として商品の取引を行っているため、法的には特許権侵害の対象者にな
り得るが、現在迄は商社を提訴しないことが暗黙の了解で不文律化されていたにもかかわらず、
材料メーカー及び部品の使用者のみならずその取引の仲介人である商社を提訴したことは極めて
重大な意義がある。
(3)それではなぜ日本製鉄が三井物産をも提訴したのであろうか。おそらく、日本の輸入窓口である商社を
訴え輸入差止ができれば、極めて効率的に製品(部品)が日本国内に入るのを阻止できる効果が大となる
からであろう。さらに、侵害品が商社を介して各国に流通されることを差し止める効果もあり得るのでは
と思う。
(4)今後の商社の知財リスク対策
一般的に商社の法務部は取引契約等の審査法務が中心で、知財法務を重視する商社は少ない。
それは知財訴訟で提訴されることがほとんどないとの不文律があったからである。
しかしながら、今後益々知財が経営や事業戦略上重視される最近の状況に鑑みると、極めて危険で商品を
取り扱う以上、常に知財リスクを考え、人材教育や外部弁理士や特許調査・情報企業との連携を強化する
必要に迫られているのである。
今すぐ知財リスクを見直し、対策を講じるべきである。
特に特許権、意匠権、商標権等の産業財産権の侵害リスクについては、事前の侵害成否調査や判断が
最重要である。
3.商社のみならず企業の知財リスク対策
産業財産権の侵害や不正競争防止法の違反事件が多発している現状下において、
グローバルな知財リスクを先読みしてそのリスクを回避すべきことが今、企業に求められている
のである。
リスク回避の具体的対策については、当事務所及びサン・グループに御相談下さい。