SUN GROUP

知財教育・調査・出願・係争など知的財産に関する
あらゆるサービスを戦略的に提供。【大阪・東京】

SUN・GROUP News

news

ホーム > SUN・GROUP News > 『英国のEU離脱(Brexit)に伴う商標の取扱い』

『英国のEU離脱(Brexit)に伴う商標の取扱い』

2020年12月01日

『英国のEU離脱(Brexit)に伴う商標の取扱い』

2020年12月1日

 〒542-0081                           
大阪市中央区南船場1丁目15番14号
堺筋稲畑ビル2階(受付5階)
TEL 06-6271-7908 FAX 06-6271-7910

副所長 弁理士 野村  慎一   
商標部 弁理士 白井 里央子
弁理士 田中  成幸

   

拝啓  時下益々御清栄のこととお慶び申し上げます。
  さて、英国は、2020年1月31日をもって欧州連合(EU)を離脱し、現在その経過措置となる「移行期間」に突入しておりますところ、2020年12月31日をもって当該移行期間が終了することとなります。つきましては、英国のEU離脱に伴う商標の取扱いについて、以下ご案内申し上げます。

敬具

1.移行期間中
 移行期間中(2020年2月1日~2020年12月31日)は、EU法が引き続き英国において効力を有することになるため、原則として2020年12月31日まで、現在の欧州連合商標(以下「EU商標」とします)の効力はそのまま英国にも及びます。
 また、マドリッドプロトコルにおいて欧州連合を領域指定している商標の国際登録(以下「EUを指定する国際登録」とします)につきましても、引き続き英国に効力が及ぶこととなります。

2.移行期間後
(1)EU商標及びEUを指定する国際登録(登録済み案件)
 移行期間の末日(2020年12月31日)をもって、EU商標及びEUを指定する国際登録は、英国において保護が及ばなくなりますが、移行期間の終了時(2021年1月1日)に、英国知的財産庁(UKIPO)は、既存のEU商標及びEUを指定する国際登録を有する全ての権利者に自動的かつ無償で同等の英国商標を付与します(離脱協定第54条、第56条)。
 具体的には、2021年1月1日をもって、EU商標及びEUを指定する国際登録は、いずれも英国国内商標として英国登録簿に移行登録され、英国の国内商標登録となりますので、これ以降は更新、商標権に対する第三者からのアクション(不使用取消審判等)、商標権の譲渡、商標権の行使等、あらゆる面において英国の国内商標登録として取り扱われることとなります。

(2)EU商標登録出願及びEUを指定する国際登録(出願係属中案件)
 移行期間の末日(2020年12月31日)に、EU商標又はEUを指定する国際登録の出願が係属中で未だEUにおいて登録又は保護されていない場合は、上記の自動的かつ無償での英国商標登録への移行の恩恵を受けることはできません。EU商標登録出願又はEUを指定する国際登録の出願人が、英国についても保護を求める場合には、移行期間経過後9か月以内に、EU商標登録出願又は国際登録と同一の商標について、その指定商品及び役務の範囲内で英国に国内商標登録出願することが必要となります。当該出願が、移行期間経過後9か月以内になされた場合には、EU商標登録出願の出願日、優先日等を維持することが可能となります。

3.英国のEU離脱(Brexit)に伴う注意点
<商標権の更新登録>
【既存のEU商標から派生した英国商標権】
 既存のEU商標から派生した英国商標権の存続期間は、原則として元のEU商標と同一となります。したがって、新たに発生する英国商標権について、今後も権利を維持されたい場合、元のEU商標の存続期間満了日迄に当該商標権について存続期間の更新登録申請を行う必要があります。

【EUを指定する国際登録商標から派生した英国商標権】
 既存のEUを指定する国際登録商標から派生した英国商標権の存続期間は、欧州連合(EU)を事後指定して登録されたものを除き、原則として元のEUを領域指定する国際登録と同一となります。したがって、EUを領域指定する国際登録商標から派生した英国商標権は、原則として、元の国際登録の存続期間満了日迄に当該商標権について存続期間の更新登録申請を行う必要があります。
 但し、元の国際登録について欧州連合(EU)を事後指定して保護を受けた場合、当該国際登録商標から派生した英国商標登録の存続期間満了日の起算日は、元の国際登録の国際登録日ではなく事後指定日となりますので、元の国際登録の事後指定日から10年をもって存続期間満了を迎えることとなります。したがって、欧州連合(EU)を事後指定して登録された国際登録から派生した英国商標権について今後も権利を維持されたい場合、元の国際登録の事後指定日から10年経過する前に存続期間の更新登録申請を行う必要がありますのでご注意ください。

※当所の管理体制
 当所は、現在当所で管理する全てのEU商標及びEUを領域指定する国際登録に加えて、2021年1月1日をもって新たに発生する英国商標権を適切に管理し、次回の存続期間の更新についてご案内する体制を整えております。その際、EU商標及びEUを領域指定する国際登録に加えて、新たに発生する英国商標権についても更新登録の要否をご検討及び御指示いただくこととなりますので、何卒宜しくお願い致します。
 また、現在、当所で管理していないEU商標及びEUを領域指定する国際登録についても、クライアント様のご要望に応じて新たに管理を行うことが可能ですので、お気軽にご相談ください。
 
<商標の使用>
 移行期間終了後(2021年1月1日以降)、EU商標及びEUを指定する国際登録から派生した英国商標登録について、英国国内での使用実績が無い場合には、不使用取消審判により当該英国商標の登録が取り消される可能性があります。また、EU商標を英国国内のみで使用しており、他のEU諸国で使用していない場合は、不使用取消審判により当該EU商標の登録が取り消される可能性があります。したがいまして、英国、EUそれぞれにおける商標登録取消のリスクを回避するために、英国及びEU諸国でのEU商標等の使用状況を調査し、必要に応じて登録商標の使用を開始する、各国での使用証拠を保管する等の措置を講じることを推奨致します。

<各種契約書について>
 商標権に係るライセンス契約書、同意契約書等において欧州連合(EU)を対象としていた場合、2021年1月1日以降、英国はその対象外となりますので、契約書内容について見直し及び修正等を検討されることを推奨致します。具体的な相談案件がありましたら当所までお問い合わせください。

 本件についてご不明点やご質問等がございましたら下記担当者までお問い合わせください。

[お問い合わせ先]
弁理士法人藤本パートナーズ
商標部 弁理士 白井 里央子
TEL: 06-6271-7908
e-mail: r.shirai@sun-group.co.jp

以上

判例紹介
SUN・GROUPホールディングス株式会社
〒542-0081
大阪市中央区南船場1丁目15-14号
堺筋稲畑ビル2F (総合受付5F)