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『特許の分割出願の適法性についての重要判決(令和2年7月22日知財高裁判決)』 <新規事項の追加か否かが争点>

2020年09月08日

『特許の分割出願の適法性についての重要判決(令和2年7月22日知財高裁判決)』
<新規事項の追加か否かが争点>

2020年9月8日

特許業務法人藤本パートナーズ
所長 弁理士  藤本昇
副所長 弁理士 中谷寛昭
特許第2部部門長 弁理士  北田明

1・はじめに
本件事件は、私共の依頼人所有の特許権について無効審判が請求され、その請求が「成り立たない」との審決に対し、相手方である請求人が審決取消訴訟を知財高裁に提起した事件(平成31年(行ケ)第10046号)です。
請求人は、本件の無効理由として進歩性欠如以外に分割要件違反を理由として本件特許の無効を主張しましたが、分割要件の適法性について知財高裁が重要な判断をしたためここに紹介します。

2.事案の概略
(1)本事案は、「回路遮断器の取付板への取付構造」に係る本件発明に関し、その特許請求の範囲に「取付板と回路遮断器とに夫々対応して設けられた【嵌合部】と【被嵌合部】とが互いに嵌合することにより、回路遮断器の取付板に対する鉛直方向の動きが規制される」(構成要件A)との構成要件が含まれていました。

(2)一方、本件特許の当初明細書等には、「取付板に設けられた【爪部】と、回路遮断器に設けられた【凹部】とが嵌合する態様」のみが記載されており、それ以外の嵌合態様(例えば、回路遮断器に設けられた爪部と、取付板に設けられた凹部とが嵌合する態様)についての記載はありませんでした。
本件訴訟は、上記構成要件Aが、当初明細書等に記載の嵌合態様以外の嵌合態様も含むものであるため、新規事項の追加に該当するか否か、すなわち分割要件の適法性が争われた事案です。

3.判決の要旨
判決は、当初明細書等には、「取付板に設けられた【爪部】と、回路遮断器に設けられた【凹部】とが嵌合する態様」以外の嵌合態様について記載されていませんでしたが、
① 構成要件Aにおける【嵌合部】【被嵌合部】には、「取付板に設けられた【爪部】と、回路遮断器に設けられた【凹部】とが嵌合する態様」以外の嵌合態様のものも含むと解される(つまり、構成要件Aを限定解釈せずに解釈される)
② 本件発明の課題と、その課題を解決するための手段との関連性から、「嵌合部」「被嵌合部」の具体的な態様は課題解決に直接関係するものではない
と判断して新規事項の追加ではないと結論付けました。

4.指針
(1)新規事項の追加は、権利化段階でよく行う補正・分割出願の手続きにおいて重要な要件であるところ、本件判決は、当初明細書に具体的な記載がない場合でもその要件を満たすことがあると判断しました。
その最大の理由は、発明の課題を重視し課題解決に直接関係するか否かの観点から、原出願の当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないと結論されました。

(2)特許出願は先願権確保のために1日も早く出願する必要があると同時に、明細書を完璧に記載することは何人も困難ではありますが、権利化後の侵害成否や無効の抗弁に対抗するためにも出願前に先行技術(公知技術)との対比のうえ、その出願戦略を十分に検討することの重要性が問われます(企業の発明者・知財部・外部弁理士との三者会議)。
特許権の成立後に他者の実施品(接近品)を侵害主張できない特許権が多数存在することは経験するところです。
特許権は、企業ビジネスに役立たないと意義がないのです。

尚、本件に関するご質問等は、北田宛にご連絡下さい。

【お問い合わせ先】
特許業務法人 藤本パートナーズ
特許第2部部門長 弁理士 北田明(E-mail: pat-kitada@sun-group.co.jp)
TEL 06-6271-7908  FAX 06-6271-7910

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