『英国の欧州連合離脱に伴う欧州連合商標・意匠の取扱いについて』
『中国における知財訴訟事件の裁判管轄の変更決定(控訴審は最高裁)』
2018年11月
各位
サン・グループ
会長 弁理士 藤本 昇
代表 藤本 周一
拝啓
貴社益々ご清栄の段お慶び申し上げます。
さて今般、下記第1と第2の件に関し最新ニュースを現地代理人等から入手致しました。
いずれのニュースも日本企業にとって極めて重要な内容となっておりますので、ご案内致します。
第1. 英国の欧州連合離脱に伴う欧州連合商標・意匠の取扱いについて
現在英国の欧州連合離脱に向けて英国政府及び欧州委員会の間で離脱協定合意に向けて協議が行われており、離脱となれば欧州連合意匠・商標の英国での保護の形態が変更になることが予想されます。
既に発表されているとおり、現在合意している内容で協定締結となりましたら協定発効から2020年12月31日までの移行期間満了前に再審査なしで英国で同等の権利取得できることになっています。
ただし、現在、離脱協定の合意形成は難航しており、来年の3月29日に予定されている英国の離脱までに協定が発効しない可能性が高まっています。
この状況において事前に対策を講じておくような事項があるかどうかについて英国代理人にも確認し、且つ英国知財局からの発表も確認しました。その確認しました事項につきまして以下の通りご報告致します。
仮に離脱協定について合意が得られず「合意なき離脱」となった場合でも英国政府としては欧州連合・商標と同等の権利(クローン)を付与することが決定しており、離脱前に既に権利となっている欧州連合意匠・商標権は英国でも保護有効となります。一方、離脱の時点で出願中のものについては離脱後9ヶ月以内に英国に出願することで同等の権利が得られます。その際の出願日は欧州連合意匠・商標の出願日が適用されます。
したがいまして、不確定要素も多く現状では協定合意の行方を注視しつつではありますが、特段、現時点で対策を講じる必要はありません。
一方、将来的には欧州全域で権利化を図る場合、相互に独立した欧州連合の権利と英国の権利の両方が必要となる可能性が高く、そうなった場合、意匠であれば意匠年金の二重の支払の問題、商標であれば欧州連合商標に対する不使用取消請求があった場合の英国での使用が認められない問題等については事前に検討しておく必要があります。
当所では英国離脱交渉の過程を注視しつつ明らかになった事項につきまして随時情報を更新してまいります。
第2. 中国における知財訴訟事件の裁判管轄の変更決定
中国の第13期全国人民代表大会常務委員会第6回会議にて、現行法では控訴審は全て高級裁判所に控訴することとなっていますが、2019年1月1日より控訴審は下記図のように全て直接最高裁判所に控訴することに変更決議されました。
<行政訴訟の場合>
<民事訴訟の場合>
これにより、民事訴訟及び行政訴訟を含めたすべての控訴事件は全国でただ一つの最高裁判所が審理することになります。今後最高人民法院は複数の地域に巡回法院を設立し、各高級人民法院から知財裁判官を転勤させる可能性があります。
よって、今後の中国における控訴審について慎重に検討する必要があります。
尚、ご不明な点がございましたら、弁理士法人 藤本パートナーズ 国際部 部門長 橋口までご連絡下さい。
【補足説明】11月9日
中国における控訴審は高級人民法院ではなく、最高人民法院に控訴する旨をご案内致しましたが、これは特許と実用新案の民事事件と行政事件についてのみです。
但し、意匠については行政事件は最高人民法院で、民事事件は従来と同様高級人民法院が裁判管轄となります。
さらに商標につきましては、今回の改正は適用されませんので、民事事件及び行政事件とも従来通り控訴は高級人民法院となりますのでご注意下さい。
〔お問い合わせ先〕
弁理士法人 藤本パートナーズ
TEL 06-6271-7908 FAX 06-6271-7910
国際部 部門長 橋口 満男