『 意匠法の大改正(案)についてのご案内 』
2018年8月
各位
弁理士法人 藤本パートナーズ
代表 弁理士 藤本 昇
副所長 弁理士 野村 慎一
意匠部部門長 弁理士 石井 隆明
拝啓
貴社益々ご清栄の段お慶び申し上げます。
さて現在、特許庁において意匠制度の見直しを行っており、その主要な改正ポイントが明らかになりました。
今回の改正は意匠制度の根幹にもなる大改正であります。
そこで今回のサン・グループニュースは、意匠法の大改正(案)についてご案内致します。
第1. 画像デザインの保護について
1.現行法
現行の意匠法(2条2項)においては、物品に記録された画像、物品に表示される画像のように物品が不可欠要件となっています。同様に、画像意匠権の侵害対象も物品を対象とした物品の製造等に限定されています。
2.改正要項
(1) 保護対象
① 物品に記録されていない画像(クラウド上の画像、ネットワークによって提供される画像等)
② 物品以外の場所に表示される画像(壁や人体に投影される画像、拡張現実や仮想現実上で表示される画像等)
③ 物品の機能と関係のない画像(壁紙等の装飾的な画像、映画やゲームといったコンテンツ画像等)
(2) 侵害行為
画像をクラウドサーバーにアップロードする行為、ネットワークを通じて画像を含むソフトウェアを提供する行為。
以上のように画像意匠については、物品と関係なく保護及び侵害行為を認める改正要項として検討されています。
第2. 空間デザインの保護について
1.現行法
現行の意匠法では、建築物(不動産)は保護対象とされていません。また、店舗やオフィス等の内装デザインは、一意匠一出願の要件を満たさないため、意匠登録を受けることができません。
2.改正要項
① 建築物(不動産)の外観デザイン
② 店舗やオフィス等の内装デザイン
上記不動産を保護対象とすることが検討されています。
これは、東京地裁平成28年12月19日の仮処分事件(コメダ珈琲店事件)決定後、店舗外観について議論されていることも背景にあります。
第3. 関連意匠制度について
1.現行法
現行の意匠法では、関連意匠の出願は本意匠の公報発行日前までとされており、また関連意匠にのみ類似する関連意匠は登録を受けることができません。
2.改正要項
① 本意匠の公報発行日後においても関連意匠の出願を認めるか。
② 関連意匠にのみ類似する関連意匠の登録を認めるか。
③ 上記のような改正を行った場合、関連意匠の存続期間をどう設定するか。
上記のように関連意匠をさらに利用しやすくするための拡充改正が検討されています。
第4. 意匠権の存続期間の延長ついて
1.現行法
意匠権の存続期間は、登録日から20年です。
2.改正要項
意匠権の存続期間を出願日から25年とする案が検討されています。
第5. 複数意匠一括出願制度の導入について
1.現行法
現行の意匠法では、第8条の組物の意匠を除き、第7条で一意匠一出願が規定されていますので、1件の出願に複数の意匠を含めることはできません。
2.改正要項
欧州や韓国のように、1件の意匠出願に複数の意匠を含める方向で検討されています。
① 複数の意匠を1出願に含めることを認めるか。
② 認める場合、1出願できる範囲を諸外国のように制限すべきか。
・1出願に含める意匠数に上限を設けるか。
・1出願の範囲を制限する必要があるか。
第6. 物品区分表の見直しについて
1.現行法
現行の意匠法では、省令で定める物品区分表に掲げられた物品の区分と同程度の区分を記載していない出願は、拒絶理由の対象とされています。
2.改正要項
今後、物品の区分と同程度の区分を記載していない出願であっても、直ちに拒絶理由としないようにすべきか検討されています。
上記のように、特許庁は、現行意匠制度を大幅に改正(特に画像意匠)して実情に即した方向と意匠制度の活用を期待しているようです。
今後のスケジュールとしましては、本年8月7日~9月21日の期間内でパブリックコメントを実施し、2019年度の通常国会に上程する予定です。
これらの改正動向につきましては、本年度 日本弁理士会意匠委員会 委員長である意匠・商標部門統括パートナー 副所長 弁理士 野村 慎一が直接関与しておりますので、ご不明な点につきましては同弁理士にお問い合わせ下さい。
〔お問い合わせ先〕
弁理士法人 藤本パートナーズ
TEL 06-6271-7908 FAX 06-6271-7910
意匠・商標部門統括パートナー 副所長 弁理士 野村 慎一