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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]注目判決 : 正露丸事件

2007年11月01日

1.事件番号

(1) 大阪高等裁判所平成18年(ネ)第2387号
   不正競争行為差止等請求事件
    (平成19年10月11日判決)

(2) 原審・大阪地方裁判所平成17年(ワ)第11663号事件
    (平成18年7月27日判決)

2.事案の概要

(1) 不正競争防止法2条1項1号又は2号違反の主張
 原告(大幸薬品)の製造販売する胃腸薬の商品表示として包装全体(包装箱)の表示態様及びそれに表示された「正露丸」、「SEIROGAN」の各表示は周知、著名であるため、被告の行為は違法 と主張。

(2) 商標権侵害の主張
 1) 登録第545984号商標権
 2) 登録第545985号商標権
 被告は、胃腸用丸薬に「正露丸」、「SEIROGAN」の各表示を使用して胃腸薬を製造販売しているため、該行為は商標権を侵害するとの主張

3.争点

(1) 包装箱の表示態様について
 ア.原告の包装箱の表示態様が不競法の「商品等表示」に該当するか
 イ.同表示は著名性(2号)又は周知性(1号)を有するか
 ウ.同表示は被告の表示と類似するか
 エ.原告製品と被告製品と誤認混同するか

(2) 「正露丸」、「SEIROGAN」の表示について
 ア.該表示が「商品等表示」に該当するか
 イ.同表示が著名性又は周知性を有するか
 ウ.同表示が被告の表示と類似するか
 エ.原告製品と被告製品と誤認混同するか

(3) 商標権侵害について
 ア.被告標章と本件商標と類似するか
 イ.被告標章は本件商標権の効力は及ばないか(商標法第26条1項2号)
 ウ.本件商標登録は無効にされるべきであって、その権利行使が許されないものか(特許法第104条の3第1項)

4.当事者の主張と裁判所の判断要旨

(1) 「正露丸」、「SEIROGGAN」の名称で本件医薬品の製造販売業者は、現在少なくとも10社以上存在し、その包装箱の表示態様も略共通しているものであって、原告が独占排他的に使用している事実がない。

(2) 原告の製品シェアは、売上金額ベースでは81.34%であるが、販売数量ベースでは60.47%になり、数量シェアは10個あれば4個は必ず他社製品である。

(3) 原告提出のアンケート調査、テフロン調査及びパッケージ調査等の結果は客観的証拠ではない他、その設問自体も問題であって採用できない。

(4) 普通名称化した標章が再商標化されるに至ったとは調査結果では認定できない。
 『もともと普通名称にすぎない「正露丸」が商品等表示性を有する表示と認識されるに至ったかであるところ、前記認定のとおり、社会の人々の認識に転換をもらたすような事態は生じておらず、正露丸の普通名称には変わりがないと認められる。』と判決(控訴審)。
 『よって「ラッパの図柄」を度外視した包装態様のみでは、商品の出所表示機能を有するものと認定することはできない。』と判決。

(5) 『被告標章は、いずれも本件医薬品の普通名称を普通に用いられる方法で表示したものにすぎないから、本件商標権の効力は被告標章には及ばない(商標法第26条1項2号)』と判決。

5.本件について、弁理士 藤本昇は、被告及び被控訴人の補佐人として、原告及び控訴人の主張に対し反論したものであるが、本件については、「商品等表示」、「誤認混同」、「普通名称の再商標化」、「すり寄り行為」、「シェア率の捉え方」、「アンケート等調査の内容や方法」等、不競法や商標法の解釈に際し非常に重要なテーマが議論され、今後の実務上、非常に有意義な判決となった。
 しかも、原審も高裁判決も正当な判決として評価できる。
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