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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]企業のノウハウと特許出願

2011年02月08日

1.企業のノウハウ(営業秘密)

 最近、企業によっては製造技術や製造方法、さらには材料等については、企業のノウハウであるから特許出願はしないとの意見を多く聞くことがある。

 一方、特許出願は出願内容、すなわち明細書に記載した事項は全て出願日から18ヶ月経過すると公開されることになる。

 従って、特許出願することはその前提として技術を公開することにある。

2.しかるに、本当の意味で企業にとってのノウハウである場合にはそれを特許出願することは回避すべきであるが、問題はそのノウハウが法律上のノウハウ定義に該当するか否かを企業が認識しているかにある

 法律上、ノウハウ(営業秘密)の要件としては、1)有用性 2)未公知性 3)秘密管理性 の3要件を具備していなければならない。

 しかるに、この営業秘密の漏洩に関する訴訟事件において、企業が敗訴する最大の要因は営業秘密の管理性にある。すなわち管理性とは物的にも人的にもその営業秘密を管理しているか否かにある。具体的には、例えば設計図面や技術資料等を特定のロッカーに収納し施錠し、特定の人しか開錠できないとか、CADやパソコン等のOA機器に社内の人間がアクセスすることが自由か否か、すなわちアクセス制限があるか否か等が重要な管理性の認定判断要素となる。

 前記のようにノウハウであるから特許出願することを避けることは、原則問題ではないが、そのノウハウが前記のように管理されていることが前提である。

 工場等においては厳格な入場制限がされているか否か等も重要である。

 いずれにしても、ノウハウとして管理している以上、企業のノウハウを特許出願することは好ましくないと考える。但し生産物からその物質が容易に解明できるような場合にその物質をノウハウとして特許出願しなければ後日模倣が発生するリスクがあることにも注意しなければならない。

3.中国等へのノウハウの流出防止策

 中国等新興国に日本企業の技術が流出あるいは盗用されるケースが増加しているが、日本企業としてその防止策を早急に検討しなければならない問題が発生している。

 特に日本企業を退職した技術者が中国等にハンティングされて技術が流出するケースがあるが、このような場合、日本企業としては退職者に一定の期間内同業他社への就職を禁止する競争避止義務契約の締結や先使用権の立証資料の公証化等の対策が重要である。

 いずれにしても、今後日本国内外において自社技術、特にノウハウ技術の流出防止と特許出願対策との両側面を厳格な基準の基で管理することが企業にとって最重要課題である。

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