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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]共同開発契約と注意事項(判決・警笛)

2021年09月09日

1.はじめに

 共同開発は、企業間、企業と大学、企業と外部機関(技術研究所やデザイン事務所)等、多様な形態で行われている。その際、秘密保持契約は締結されているが共同開発契約が締結されていないケースや共同開発契約は締結されているが契約内容に問題があるケースがある。
このようなケースは、後日当事者間で問題が発生し、紛争となるケースも数多くあるので要注意である。

 私に相談されたケースも含め、共同開発契約を締結する際、特に注意すべき条項について解説する。

2.秘密保持条項

 共同開発する際、事前に共同開発契約を締結すべきことが前提となるが、その際、相手によっては秘密保持契約のみの締結を求めてくる場合もあるが、該秘密保持契約のみでは後日権利の帰属等で問題が発生するので、共同開発契約を締結し、該契約書に秘密保持条項を規定すべきである。その際、必ず秘密内容を特定する文言とすべきであり、曖昧な表現にすべきではない。

3.権利の帰属

 共同で開発した場合には、その成果である発明やデザイン等知的創造物がだれに帰属するのか、あるいは特許出願を受ける権利がだれに帰属すべきか明確に規定すべきである。

 通常、共同開発の場合には共有となるので、出願を受ける権利が共有となり、共同で出願するのが原則である。但し、出願は単独で出願可能と定めることも可能である。後日トラブルとなるが、共有の対象が不明確である場合や共同開発後に共有者の1人が関連出願を単独でする場合があるので、これらの点も予め規定しておくべきである。

 また、外国出願について、共同か単独出願が可能かをも定めるべきである。

4.成果の帰属(製造・販売等の特定)

 共同の成果物である技術やデザイン及びこれらの実施品(製品)についての製造権、販売権がだれに帰属するのか明文化すべきである。共有に係る特許権については、
特許法73条に

①他の共有者の同意がなければ持分譲渡や質権設定はできない
②特許発明の実施については別段の定めがない限り共有者は自由実施できる
③他の共有者の同意がなければ専用実施権や通常実施権を許諾できない
と規程されている。

 よって、製造・販売についての規定がなければ、共有者は各自自由に実施できるが、製造・販売等の実施内容について定める場合には、予め規定する必要があるので注意すべきである。

 例えば、製造はA・販売はBのケースや材料供給はA・その材料で完成品を製造するのがBのケース等と決める場合には、契約書に必ず規定すべきである。

5.知財高裁判決(令和2年11月30日)

 本事件では、特許権者が4名で、共同出願契約書を事前に締結し、該契約書13条には「事前の協議・許可なく、本件の各権利(特許権)を新たに取得し、又は生産・販売行為を行った場合、本件の各権利は剥奪される(甲、乙、丙及び丁の全員が対象である)」と記載されていた。

 しかるに、そのうちの1人が独自に日本国内において製造し販売したため、本件訴訟(原審は東京地裁)となった。判決では、上記1人が独自に製造・販売した行為は、前記契約に違反するとして、その者の製造・販売行為は本件特許権を侵害すると判示した。

知財高裁 令2.11.30 判決 平29(ネ)10049号

6.上記のように共同開発契約や共同出願契約をするに際し、製造・販売はだれがするのか明確にしておくべきである。あるいは材料メーカーと完成品メーカーの場合には、完成品メーカーが必ず材料を材料メーカーから購入することを条件とするか等、共有特許権の実施については要注意である。

判例紹介
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