私も早や弁理士活動36年、「歳月人を待たず」とはよく言われたものである。
36年間の弁理士活動の中でこれ程大きく変革・変貌した分野はないのではと思える程知的財産の分野は内外国とも大きく変貌した。
このことは、企業の知財部が特許課→特許部→知財部とその名称が様変わりしたことからも如実に示すとともにその活動も出願件数を競う時代から良い権利化への転換がこのことを意味する。
しかしながら、私のように企業に在職経験なく弁理士生活一本で多数の企業の知財活動をサポートしてきた弁理士から現在の企業の知財活動を分析しながら今後の知財活動のあり方について一語思うことを忌憚なく書かせていただくと。
私が思う今後の企業の知財活動の主要テーマは下記五大テーマにある。
第1.ビジネスに役立つ発明の発掘活動
知財部は、他部門(事業部、研究所、営業部等)に密着して現在あるいは将来大きな市場を形成するであろう技術や商品を予測してそのピンポイントに合った発明を如何に発掘するかである。このことは知財部と他部門との密なる連携強化が最低条件である。
第2.企業経営に貢献する知財活動
現在迄の知財活動は、出願から権利化迄に全力投球し獲得した権利の活用による企業経営への貢献が少なく、経営陣からは、「知財は金を食う虫」であると悪評されたこともあるが、今後は権利化迄に投資した資金からその何倍、何十倍の利益を生み出すための活動をするかが重要で、このことは出願する発明の事前評価を十分に行い、そのうえで権利を如何にビジネスとして活用するかがキーである。
第3.知財の危機管理対策
権利侵害によって受ける企業の損害は有形・無形問わず計り知れない時代である。このことを意識して知財部は事前の侵害予防や営業秘密の漏洩防止等の危機管理対策を十分にシステム化すべきである。同様に職務発明対策も重視すべきである。
第4.グローバル化における知財活動
企業のグローバル化は大きな潮流であり、この潮流の中で知財の国際化対策、特に、中国等BRICS対策や国際活動が益々重視されなければならないが、そのポリシーが必ずしも一環していない。
第5.ビジネスセンスのある知的人財
現在の知財担当者は技術には詳しいが、ビジネスセンスのある人は我が国企業では極めて少ない。今後上記のような知財活動を推進するためには法律・技術のみならず経済にも詳しい、ビジネスセンスのある人が必要不可欠となる。知財活動は人が実践するのであってパソコンが行うものでは決してないのである。
知的人財が企業をサポートするのである。