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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]プロパテント時代と権利の安定化策

2006年11月01日

 世は正に知的財産ブームで、政府も知財戦略会議で我が国にとってプロパテント政策が如何に重要であるかを内外国にPRして相当の年月が過ぎるが、政府の声は私には知財バブルではないかと思える今日この頃である。

 私は知的財産、特に工業所有権の侵害訴訟を既に100件以上受任し体験したのであるが、最近最も感じることは侵害訴訟において特許権等が無効の可能性ありと判断され権利者が敗訴するケースが多いことである。

 特許出願しその後拒絶理由をクリアーして、あるいは拒絶査定不服審判によって権利化されて、「さあ」権利行使しようとして侵害訴訟を提起したところ、被告から公知資料が提出され、その結果、訴訟において特許権が無効のおそれありとして、あるいは無効審判で無効にされてしまうことがある。
 しかもその無効資料が当然に審査、審判段階で特許庁がサーチしなければならない国内の特許文献である。

 これでは、折角特許権を獲得しても到底その特許権を信用できないのが現実である。企業によっては権利行使する段階で事前に公知資料をサーチして安全を期してから権利行使する企業まで出現して来たのである。

 これでは、「何のための審査か」高い審査請求料を支払って審査させているのに特許庁の審査が信用できなくなり、「いい加減な審査」と言われても止むを得ないのではないか。

 政府がプロパテント政策を重視するならば「審査の早期化」よりも「審査の安定化(権利の安定化)」に全力投球すべきである。

 「広くて強い権利」、「良い権利」を目指して出願人が努力してもその権利が「無効になる権利」であれば権利化の意義が全くなくなるのみならず特許庁自体の信用が失墜するのである。
 もっと審査に努力されるべきである!

 このことは出願人としても出願前の公知資料調査を十二分に徹底して行うことも重要である。単に出願することのみを目的とすべきではないのである。

 「良い権利」や「広くて強い権利」を獲得するには、特許庁が信用できない以上、自ら公知資料調査を十二分に行った上で、厳格な社内審査の結果、出願の適否を評価・判断して出願すべきである。

 このことが、正に「権利の活用」となり「企業のプロパテント戦略」につながることを指針とすべきである。

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