私は、知的財産権の侵害訴訟を数多く体験したことから、各企業から侵害鑑定や侵害紛争、侵害訴訟の依頼や相談が最近激増しているのであるが、これらの依頼案件や相談案件で最も強く感じるのが権利行使できない権利が数多く存在することである。
その中で、最も感じた感想は、「なぜもう少しクレームの文言を広く記載することを考えなかったのか」、「なぜ実施例を数多く記載しなかったのか」、「なぜクレームの文言を明細書で説明しなかったのか」、「なぜ関連意匠や部分意匠を出願しなかったのか」等、数多くの疑問や悩みを感じるのである。
私の事務所で作成しなかった明細書によって権利行使できるか相談があった場合や意匠権で権利行使できるか相談があった場合に、常に上記のようなことを感じるのである。
このことは、弁理士自身あるいは企業の知財担当者自身に責任があると思う。
これらのケースは、従来型の知財実務、すなわち権利化を目的とし、権利行使を目的とした意識を欠くことに起因するのである。
21世紀の知財担当者は、「如何に企業のビジネスに役立つ有益な権利を獲得するかに全力投球すべきである。」
そのためには、まず事業部や開発部(研究所)と知財部との意思疎通を図り、連絡・連携を緊密化することを第一義とする。
次に開発段階から知財部や弁理士が開発会議に参加して開発動向を知財の目でチェックし提言、指導することである。
開発テーマが技術的・法律的・経済的(市場的)に高く評価できるものであればある程、例えば企業の生命線を賭ける程重要な案件であるならば、あらゆる角度から市場の独占化を図るべく戦略会議を行うべきである。
その戦略会議に登場する人物は、開発のヘッド及び担当者、知財部員、外部弁理士、さらにはその案件に強いビジネスマンであることが最低必要である。
この戦略会議は、前記のような技術的評価、法律的評価、経済的(市場)評価ができる人物でなければならないのである。
これらの人物によってその開発から生まれたビジネス手法、発明、デザイン等の創造物をあらゆる(特に模倣性、追従性、応用性、改良性)観点から評価、検討のうえ出願戦略を考えることが最重要課題である。
このように、出願前に発明等の評価活動を十二分に行うこと、特に事前の特許調査や特許情報解析、パテントマップ等の手法を用いることによってハイレベルな評価を行うことが重要である。
これら出願前の戦略会議を十分に行うことによって、有益な権利を獲得することができ、その結果侵害事件やライセンス事件において優位な立場で権利行使が可能となるのである。
正に、知財戦略は出願前の戦略がその企業のビジネス戦略のキーとなることを忘却してはならない。
私共、サン・グループを常に企業の利益代表として、藤本昇特許事務所、特許調査・特許情報解析企業(株式会社ネットス)が共同体として企業の知財戦略をサポートすることに、我が国唯一の知財プロ集団として評価されているのである。