経産省は、2004年1月 企業と市場の知的財産に関する相互理解のための情報開示を目的とした知的財産情報開示指針を発表した。この発表を受け、現在約13社が「知的財産報告書」を公表している。
該報告書の公表目的は、IRツールとして投資家、株主、社員等に対して投資情報の開示と企業価値の公表、特に企業の無形資産の公表にあると考える。
現在、財務諸表において、無形資産としての知的財産権の価値が公表されていない。しかるに、今後アメリカと同様に我が国においても企業価値は有形資産から無形資産にシフトされていくのである。
しかしながら、企業の知的財産の価値は、第三者、特に投資家など市場においては把握できないのが現状で、特に企業が積極的に市場に対し企業価値としての知的財産に関する公表を行っていないのである。これでは第三者は積極的且つ実質的な企業価値を把握及至は認識できないのである。
従って、そのツールとしての知的財産報告書の公表は市場との関係において意義があるものである。
しかしながら、現在公表されている知的財産報告書の主たる項目は、
1. 中核技術と事業モデル
2. 研究開発セグメントと事業戦略の方向性
3. 研究開発セグメントと知的財産の概略
4. 技術の市場性、市場優位性の分析
5. 研究開発、知的財産組織図、研究開発協力、提携
6. 知的財産の取得・管理・営業秘密管理・技術流出防止に関する方針
7. ライセンス関連活動の事業への貢献
8. 特許群の事業への貢献
9. 知的財産ポートフォリオに対する方針
10 .リスク対応情報
11. 商標に対する対応
12. コーポレートブランド力強化
などである。
これらの項目はそれなりの意義ある項目ではあるが、実際上公表されている内容は現状の技術や開発に関する情報あるいは特許出願件数などの情報であって、投資家などにとって最も重視する知的財産の事業への貢献、知的財産ポートフォリオ、知的財産による市場の優位性など、今後の企業価値を評価するための知的財産と事業との関係情報が極めて少なく、また知的財産権による市場の優位性情報も詳しく公表されていないのである。
今後、IRとの関係で企業は、企業価値を向上する知的財産と特許・事業との優位性等をより詳細に情報開示することによって企業価値、企業成長等を投資家等に積極的に認識させるべく公表すべきで、その手段としての知的財産報告書は有意義であると考える。