最近企業は、その危機管理対策の甘さあるいは危機意識の欠如から法的または社会的に批評されているケースが数多く見られ、これを機に企業内に危機管理対策室やリスクマネジメント室を新設している企業も出現してきた。
危機の要因は企業によって様々であるが、知的財産との関係においては、大別すると下記のとおりである。
(1) 特許権等知的財産権の侵害トラブル
(2) 共同開発等における契約上のトラブル
(3) 企業の営業秘密の漏洩等のトラブル
(4) 職務発明に関するトラブル
(5) 不正競争防止法上のトラブル
上記トラブルが要因となって紛争や訴訟に巻き込まれ、最悪のケースは企業が多大な損害賠償を受けたり、製品の製造、販売が中止に追い込まれるケースが数多く発生していることである。
このようなケースが我が国においても数多く発生した要因としては、我が国がプロパテント政策を重視し、法改正等による損害賠償額の規定が改正(特許法102条)された他、企業間の競争が激化してきたことにある。
このような時代においては、企業は自己防衛のためにその危機管理対策を少なくとも社内的に周知徹底化しなければならないのである。
危機管理の予防対策としては、上記ケースによって異なるため、ケース毎に主たる対策を例示すると下記のとおりである。
(1) 侵害予防対策
開発工程から製品化に至る迄に徹底した他人の権利調査を事前に行うとともに調査結果、特に障害となる権利については弁理士の鑑定や判断を求めることである。
この点は社内の周知化が必要。
(2) 契約上の紛争防止対策
安易に契約を締結することなく必ず事前に法務部や知財部のチェックを受けるとともに必要に応じて弁理士や弁護士に意見を求めることである。
(3) 営業秘密の漏洩防止対策
社内の営業秘密管理規定を整備するとともにその管理体制を物的、人的(アクセス制限等)側面から周知化させること。営業秘密の定義も明確化することも重要。
(4) 職務発明に関する紛争防止対策
社内規定の整備と発明者の意見聴取等発明者との意思の疎通を十分に図るとともに退職時の発明者の取り扱いに十分配慮すること。
(5) 不正競争防止法上の紛争防止対策
不競法、特にデッドコピー(形態模倣)については、安易に判断することなく弁理士に事前に相談のうえ実施化を図ること。
いずれにしても、知的財産に関する企業の危機管理対策として最重要ポイントは、社内の周知徹底化策と外部の有力な弁理士の指導を常時受けられる体制を構築しておくことである。