(事件番号)
平成18年(行ケ)第10519号審決取消請求事件
(争点)
登録第4868675号商標(指定商品第30類ぎょうざ、サンドイッチ等)と引用商標(第1673048号、第2471182号、第509755号)とが類似するか否かが争点
(経緯)
1.特許庁の審決(無効2005-89164)は、本件商標(第4868675)は、左側に赤の色彩を施した「餃子の」の文字を配し、その右側に赤字に白抜きの文字で大きく「王将」の文字を表し、該「王将」の文字を緑・橙・黄色の三重の《》で挟んだ構成よりなるところ、その構成中「餃子の」の文字部分は本願の指定商品中の商品「ぎょうざ」の普通名称「餃子」に格助詞「の」の付したものであって、本件商標中、自他商品の識別標識としての機能を果たすのは「王将」の文字部分にあると把握・認識されるものであるから、該文字に相応して「オウショウ」の称呼及び「王将」の観念を生ずるものというべきである。
他方、引用各商標は、「王将」の各文字に相応し「オウショウ」の称呼及び「王将」の観念を生ずるものと認められる。
この点に関し、被請求人は、本件商標はその指定商品に係る取引者、需要者(一般消費者)がレストラン等の外食産業と密接に関係するものであり、かかる外食産業の取引実情によれば、「餃子の王将」から被請求人の著名な通称(中華レストランチェーンの名称)を認識すると考えるのが自然であり、これから「王将」のみを分離して認識すべき理由は全くない旨主張しているが、本件商標は、前記したとおり、第30類に属する商品(食品)を指定して出願されたものであり、特定の役務等を指定して出願されたものではないから、本件商標をその指定商品との関係より見た場合には、上記の認定・判断を妥当とするところであり、被請求人のかかる主張は、採用することができない。」と判断した。
2.原告(特許庁の被請求人・筆者が代理人)の取消事由
本件商標はその使用態様や使用実績並びに取引の実情を勘案すると、明らかに「餃子の」と「王将」との文字が不可分一体のものとして使用され、その結果需要者・取引者において、「ギョウザノオウショウ」と称呼されて王将フードサービスの中華レストランチェーン又はその製造販売に係る「餃子」等の商品を観念させるものとなっている以上、現実に使用されていない引用各商標の「オウショウ」の称呼が生じる「王将」とは称呼のみならず観念においても異なるため、需要者において出所を誤認混同するおそれはない。
さらに、現実に被告が使用している「大阪王将」、「OSAKA OHSHO」の称呼である「オオサカオウショウ」とも商品の出所を誤認混同するおそれはない。
特に、原告の本件商標は、「餃子の王将」「ギョウザノオウショウ」として需要者、取引者間で著名な商標として高い識別力を有するものであるのに対し、被告の審判段階での主張を理由にその使用商標を周知であると認めたとしても、該使用商標は「大阪王将」「OSAKA OHSHO」「オオサカオウショウ」として周知であって、両商標は外観はむろん称呼、観念においても異なるものであり、需要者において商品の出所を誤認混同するおそれがあるとは到底認められない。
以上のとおり、商品の取引の実情等具体的取引状況を勘案して本件商標と引用各商標とを対比観察した場合に、取引者・需要者の心理に商品の出所について混同が生じるおそれはない。
よって、本件商標と引用各商標とは称呼及び観念において共通する類似商標であるとした審決の判断は、明らかに商標の類否判断手法を誤った不当な判断であって、取り消されるべきである。
3.判決の要旨
(1) 外観、称呼、観念について
以上によると、本件商標と引用各商標とは、外観において区別しうるが、称呼については場合によりこれを同じくし、観念は同一であることになる。
(2) 取引の実情を踏まえた検討
取引の実情にかんがみると、共通の指定商品である餃子に関し、その取引者・需要者には、本件商標は高い識別力を有し、その外観により原告の商品であることを想記させるものとして引用各商標と識別することは十分に可能というべきである。
これに対し被告は、原告の店舗の展開が全国的とはいえず、中華料理店の役務に関する実績と異なり冷凍食品に関しての販売実績もないことなどから、原告が本件商標を付した餃子を販売した場合には、被告の商品と誤認混同が生じると主張し、それに沿う証拠も提出する(乙158の1ないし4など)が、被告商品は、生協、宅配業者、スーパー等での販売のいずれも大阪王将のブランドであることを正しくアピールしていること、本件商標を使用した原告の中華料理店での上記営業実績からすれば、被告の主張は上記判断に影響を及ぼさないというべきである。
以上によれば、本件商標と引用各商標とは、同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとは認められず、互いに類似する商標であるということはできない。そうすると、本件事件の審決には、法4条1項11号にいう類否判断を誤った違法があり、この誤りは審決の結論に影響を及ぼすものというべきである。
よって、審決が本件登録商標についての登録を無効とするとの審決を取り消す。
4.寸評
本件事件においては、商標の類似判断基準である、外観、称呼、観念において同一部分があると認定しながら、その取引の実情にかんがみ本件商標は「ギョウザノオウショウ」と一連に称呼され、また観念されるものとして出所の混同を生じないと、正に使用による取引重視の正当な判決である。