最近、サン・グループ所属のネットスに障害特許の調査依頼が急増しているが、その要因は不況時における企業の危機管理対策にあるかと考える。すなわち企業経営者にとって少なくともリスク回避は、経営上の命題である。
例えば、開発して製造・販売した新製品が他人の特許権等を侵害し、その結果製造・販売の中止に追い込まれたり、高額な損害賠償金を支払わなければならなかったりすると、企業経営上重大な問題となる。
このような事態を回避するために、新技術や新製品の開発段階から販売する事前の段階で、他社の障害特許や障害意匠権の存否の調査依頼が増加しているのである。
しかるに、このような調査をする際に最も重要な点は、企業の開発製品(イ号物件という)の特定である。すなわち、イ号物件を特定できなければ具体的な対象特許(障害特許)を調査できないし、また調査してもポイントがずれてしまうのである。
よって、イ号物件の特定方法について開発段階から製品化に至る迄の各工程について解説すると下記のとおりである。
(1) 第1ステップ(開発テーマ段階)
この段階では、開発テーマの内容自体が必ずしも具体的ではないため、イ号物件を明確に特定できない。
従って、この段階での障害特許の調査は、開発テーマに関連する特許を広く収集する予備調査として考えるべきで、ズバリ障害特許を調査するにはイ号物件の特定が不十分である。
(2) 第2ステップ(開発進行段階)
開発テーマからさらに進行して具体的なアイデアや構想が特定された場合(例えばラフ図面等によって具現化された場合)には、上記予備調査で収集した公報または新たな調査によってそのアイデアや構想に合致する発明を調査することが可能となる。
但しまだこの段階でもイ号物件の構成特定としては十分ではないため、障害特許としては個別具体的に特定できない。
(3) 第3ステップ(試作品・モデル等の完成段階)
この段階では、イ号物件は試作品、モデル、図面等で特定できるため、その構成を特定したうえで障害特許を調査することは十分可能である。
但しこの段階からさらに設計変更される可能性もあるため、その点を予めヒアリングしたうえで障害特許を調査すべきである。
あるいはこの段階の調査によって障害特許が発見されればその回避策としての設計変更も検討可能になるため、この段階の調査は障害特許の調査としては非常に重要である。
(4) 第4ステップ(製品の販売前段階)
この段階では、イ号物件としての製品は具体的に特定できるため、障害特許の調査としては最低限この段階では必ず調査すべきである。但し障害特許が発見された場合に設計変更が時期的に困難となるおそれはある。
企業としては、上記ステップ中、遅くとも第3ステップで障害特許を調査することを提言しますが、この調査において重要なことは調査対象物件としてのイ号物件をある程度具体的に特定できることが必須であるため、開発内容がその都度変更する場合にはイ号物件の特定は困難となる。
さらに、障害特許が発見された場合の判断と対処法が重要であり、侵害成否の判断や設計変更の判断は、専門の弁理士の判断と指導が必要不可欠である。
いずれにしても障害特許の調査は重要ではあるが、専門の調査会社と実力ある弁理士に依頼することが最重要。