2009年11月6日、中国北京市の知的財産保護協会の招聘により北京にて講演を行った。当日は企業や特許事務所の弁理士等70名の出席者があり盛会であった。
私の講演テーマは、「知的財産の重要性」と「最近の日本企業の知的財産戦略動向について」であった。
中国においては、特許、意匠、商標の出願が激増しているが、その内容については日本等諸外国の技術やブランドの模倣等数多くの問題もある。
特に当日の出席者の多くは知的財産に関する意識はあるが知識的には低く、知的財産に関する日本企業の過去の歩みや特許を活用した日本企業の成功事例を紹介した。
現在、中国は先進国の模倣も多いことに鑑み自ら独自な技術やデザイン創作の重要性と、これらの技術やデザインを特許や意匠で法的に保護することの重要性をアピールした。
次に、現在の日本企業の経済環境が厳しい中で、企業間競争が激化するとともに企業のグローバル化が進行している実情を紹介し、現在の日本企業の知的財産戦略動向について講演した。
特に、中国等新興国に対して日本企業の出願が増加してはいるが、国内出願は減少傾向にあること、すなわち日本企業は現在出願の量から質への転換を図り、企業ビジネスに役立つ高価値化権利の獲得と、外国における有益な権利の獲得に力を傾注していることを説明した。
当日は、私とネットスの田村勝宏、藤本周一も同席し、「日本企業の最近の特許情報の活用事例」について講演した。
中国特許庁の特許公報の電子化は日本程ではないが、電子媒体となっている現状及びこれらの活用ノウハウ、さらには諸外国の電子媒体について説明した。
特許情報は、法律情報であると同時に有益な技術情報であること、特に最近の日本企業はこの特許情報を活用してシーズを発見したり、競合他社動向や技術動向を解析していることの実例を紹介した。
今回のセミナー終了後の質問は非常に多く、時間をオーバーすることとなった。
特に質問が多かった点は、コンピュータソフトやビジネスモデル等の特許性と日本の特許情報の検索方法、さらには侵害時の損害額(日本における)等についてであった。
今回のセミナーで最も感心したのは当日の出席者が若い人、特に女性が多かったことである。今後中国経済は益々発展し、国際経済の中でそのポストはさらに高くなるであろうが、このことは同時に知的財産に関する意識や知識も高まり、先進国に対しても知的財産を武器に優位な戦略を実践することが予測できるので、日本企業は注視する必要がある。
よって、今後、日本企業は早急に、少なくとも知的財産に関するグローバル化戦略を企画・実践すべきであると考える。特に中国等新興国への出願対策が重要になると同時に、諸外国の障害特許調査が必要不可欠であると考える。