2009年度は、リーマンショックによるアメリカの金融不況に端を発し、世界同時不況に突入した結果、日本企業も未曾有の不況下に落ち込んだ。
このことは、企業の経費の大幅な見直しやリストラ等企業経営に与える影響は極めて深刻化を増し、これが企業の知的財産分野への活動にも大きな影響を与えることとなった。
具体的には特許等の出願件数の見直し化や審査請求の見直し、さらには外国出願の見直し等多方面にわたり、特許事務所に対しても外注先の見直し、コストの削減要求等極めて厳しい対応が迫られてきたのである。
これらの企業の知財活動は、総括すると従来の大量出願型から企業経営や企業の事業活動に貢献する知的財産活動とは何か、それを問う意味で極めて有益であると考えるべき良きチャンスでもある。一方企業環境が厳しくなった場合に真の知財活動や知財の意義とは何か自らの企業に問い、自らその意義を考えるべき時である。
知財活動と言っても企業の大小や企業活動の内容によって夫々異なるものであって、一律に論じることはできないが、少なくとも企業内容に関係なく、重視すべき知財戦略は、第一に先を見た知的創造の開発であり、第二に他人の権利を侵害しない等の知財の危機管理対策であり、第三は企業のグローバル化への対策、第四は知的人材の育成にあると考える。
これらのテーマは、全ての企業に共通するテーマであり、これが実行されなければその企業の生存すら問われるものである。
いずれにしても今回のような未曾有の経済危機は、企業の真の知財活動を見直す良き機会であるとともに、弁理士にとってもこのような企業実情を把握した上で、弁理士の使命である産業財産権の保護と活用を如何に行うべきか、すなわち依頼企業に応じた知財の支援活動を行うことが最重要課題であり、単に出願の代行業務のみを行っているようでは弁理士の将来はないのである。
2010年度は、上記総括を踏まえて各企業は、その企業の経営方針にそった知財の活動方針を企画し、選択と集中による技術のオンリーワン企業を目指すための特許網の構築や、技術動向や競合他社動向分析による強くて戦える知財力を強化すべき知財戦力を構築すべきである。
そのためにも自社のみならず有力な弁理士や特許情報分析企業と提携して共同作戦を考えることも重要な手段である。
いずれにしても、次年度以降は知財戦力の強さによって、益々企業間格差が生じると思うので、より一層企業経営に貢献する知財強化策とは何か、その企業独自に夫々考えなければならない時代に突入したことを忘却してはならないのである。