最近、企業内における研究・開発部門と事業部門と知財部門との三位一体による知財戦略の必要性が叫ばれているが、現実の企業、特に大手企業ではあるが知財部門が10名前後の企業(知財の中小企業と私は命名している)にとっては必ずしも上記三位一体の本質が機能していない。
ここで三位一体の必要性の本質とは、企業活動において縦割組織は確立されているが、横の連係プレイが必ずしも機能している企業が少ないのである。
企業が投資し、将来の市場規模が見込まれるような極めて重要な技術や商品開発については、事業計画と開発計画及びこれらの計画に即応した知財計画が連携プレイの基に構築されていなければならないのである。すなわち、開発段階から市場調査や他社の特許調査、技術動向調査を事前に行うことがまず重要なのである。
この開発スタート時を第1ステージとするならば、この段階においては前記のような予備調査を十分に行ったうえで、技術動向や他社の特許調査等によって情報を収集し、この情報を分析したうえでマップ化することが重要。
次に第2ステージとして開発がスタートし研究・開発が進行すると、その過程で発生する発明を知財部が技術的、法的に評価し、必要な発明については直ちに出願戦略を行うべきであると同時に他社の特許権を侵害しないかその予防も行う必要がある。
さらに、開発の結果、試作品やモデル、設計図等が完成する第3ステージにおいては、より重視して障害特許がないのか、その範囲を特定して再調査する必要があると同時に如何に基本特許が獲得できるか、さらには基本特許をガードするその周辺特許も併せて考え、出願前にその方向性とそのクレーム範囲等を画定する作業(特許開発会議)が重要となる。
このような第1乃至第3ステージにおける作業を行うには、前記事業部と研究・開発部と知財部との意思疎通と各部の情報公開や三者会議による開発や営業及び知財のテーマについて集中した議論が必要となるのである。
現在の多くの企業では、前記3部門の活動が分散型又は請負型(受任型)であって、一体化した協同作戦型ではないのである。
今後、より一層企業のグローバル化と企業間競争の激化する中で、企業内における知財活動が三位一体型で強力且つ高度な戦略のうえで行われているか否かによって、企業の成長力や競争力が決するものと思う。
企業内のみで前記知財戦略を十分に実践できる能力や人材が不足するならば、有能な経験のある外部弁理士の指導や業務サポートを得ることが企業にとって重要な選択肢であると同時に知財部長の使命でもある。