2012年4月スタート、各企業も新年度の知財計画の実行が始まったところであると思う。
しかるに、最近、私及び事務所・ネットスに相談が多い案件は、企業の海外進出や海外戦略に伴う、海外での知財の保護と模倣対策並びに企業のリスク回避策にある。
さらに、私、個人への相談として最近多いのは、権利の活用戦略とその方法にある。
最近の企業環境は未だ厳しい環境下にある一方、企業は多くの知的財産権を保有しているが、それらの権利は活用されず、スリープしているのが現状であることに対し、経営者からは積極的に保有権利の活用を求められているのである。
これに対し知財部として如何に権利の活用を図るか、その対策と手法に悩んでいる企業は必ずしも少なくないのである。
最近これらの活用事例と思われるケースが、現実に私の事務所で受任している案件があるので、これについて紹介しましょう。
※A社のケース
A社の完全な競争企業であるB社の知財部長から、A社の商品はB社保有の特許権を侵害しているのではないか、との通知があった。
しかるにA社が調査したところ、B社の特許権は登録後既に5年も経過し、A社の商品は古くから販売されていたにもかかわらず現在迄一切の通知がなかったが、最近前記通知書があった。
このことは正にB社は保有特許権と侵害品との調査を行った結果、保有特許権活用の一環として侵害通知をA社に発送したものと思われる。
しかもB社の態度は極めて強行である点が特徴で、A社はそのための防御に苦労しているのである。現在迄はこの業界ではほとんど紛争がなかった業界である。
※甲社のケース
甲社の主力製品について乙社の知財部長から乙社の特許権を侵害しているのではとの通知があった。
甲社が調査したところ侵害の可能性ありと判断したが、それが主力製品であるため、万一侵害認定されると甲社としては大変な状況になる。
よって、甲・乙社間で話し合うことにしたが、乙社の態度は強行で訴訟を辞さない態度である。
このケースも乙社として権利活用の一環としての権利行使を行ったものと思われる。
上記2例からも明らかなように、最近の企業は同業者であるか否か関係なく、権利活用の一環として侵害品調査を開始し、侵害のおそれある商品については権利行使を積極的に行うようになってきたのである。
正に、企業は生き残り戦略と知財権の活用戦略としての権利行使を積極的に行う状況下にある。
さらには、権利行使によって積極的にライセンスを許諾してライセンスフィーを収入として獲得する戦略にある。
いずれにしても保有権利を見直し、積極的に権利を活用し企業のビジネスに生かすことこそ本来の産業財産権を獲得する重要な意義であることを忘却してはならないのである。