1.はじめに
本年3月11日付けで「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
今回の改正目的は、「国際調和を図りつつ、地域の経済や雇用を支える中小企業・小規模事業者にとっても一層使いやすい知的財産制度を構築することにある」と経産省は趣旨説明しているが改正内容と中小企業との関連性はほとんどない。
2.特許法の改正
特許法の改正内容は、「特許異議申立制度」を創設することにあるが、特許異議申立制度は過去にも存在し、新たに復活したにすぎない。
この制度による異議申立は、誰でも申立て可能で書面審理のみで行うもので、特許公報発行日から6ヶ月以内に行うことが要件である。
特許異議申立制度の創設によって無効審判請求は利害関係人のみ請求可能となりました。
今回の特許異議申立制度の創設によって特許権の早期安定化を可能とすることを目的としています。
3.意匠法の改正
今回我が国が加入予定である「意匠の国際登録に関するヘーグ協定のジュネーブ改正協定」に基づき、複数国に意匠出願する場合、従来のように個別に出願するのではなく、複数国に対して意匠を一括して出願することが可能となります。
この協定により意匠出願手続が、特許のPCTや商標のマドプロと同様に複数国に対し一括出願することができるので手続きの簡略化とコスト低減を図るメリットがあります。
4.商標法の改正
(1) 今回、他国で保護されている色彩や音といった商標について広く保護対象として保護することとなりました。
現在、商標は文字や図形等からなると定義されていますが、今回の改正では、「音の商標」、「色彩のみからなる商標」も保護対象とされますので登録可能となります。
今回の改正によって広告・宣伝時等でその企業独自な「音」によって他商品や他役務と識別しているケースや独自な「色彩」によって商品の識別力を発揮しているケース等はこれが保護対象となりますので他社の模倣防止や混同防止に役立てることができます。
(2) 地域団体商標の登録主体の拡充
地域団体商標を出願する主体として、新たに商工会、商工会議所及びNPOが追加されましたので、これらの団体も地域団体商標を出願して登録することが可能です。
5.今回の法改正で実務上重要な点は、特許異議申立制度と意匠の複数国一括出願の規定並びに商標の保護対象の拡充にあります。
今後の改正案は国会で審議されて法案が成立した後、1年以内に施行されます。
この改正内容についてさらに詳しく知りたい方はサン・グループ(藤本昇特許事務所)に御相談下さい。