1.企業にとって知的財産の価値とは?
先般ある大手企業の社長は、「知財部は毎年数億円の予算を計上しているが、当社にとって知的財産は必要ですか、あるいは知的財産は当社に貢献していますか、収益はいくらですか」と知財部長に質問されたが、知財部長は社長を説得するに十分な意見をもっていなかった。
知的財産は、従業員の知的創造物を保護する点からあるいは企業の技術・デザイン・ブランドの模倣を防止する点から、さらには知的財産権の活用によって収益を得る点等からもその制度価値はある。
2.企業の現状の知的財産業務
しかしながら、企業の大半は知的財産権、特に産業財産権を獲得するための権利化業務に邁進しているのが現状ではないだろうか。その結果知財部は明細書チェックや意見書のチェック等特許事務所の延長上の仕事を行い、本来の企業知財部としての知財活用戦略や競合他社の技術・特許分析等が疎かになっている。
知財部は特許事務所と異なり、企業の一セクションに過ぎないのであって企業のために何ができるか、何をしなければならないのか、もっとその存在価値を示す業務を遂行すべきである。
前記社長の苦言は正に知財部はむろん知財業務が経営の観点から見えないのであって、見えるのは経費増ばかりが目立つのである。
3.今後の知財部・知財業務の役割
企業はビジネスを行っているのであって、特許の件数を求めているのでは決してないのである。
従って特許件数が少なくてもその特許が企業ビジネスに貢献していれば企業にとって知財は価値ある財産権である。
従って今後の知財部や知財業務は下記観点から企業経営や企業ビジネスに貢献すべきである。
1)企業価値を高める知的財産の確立
2) 産業財産権を戦略的に獲得し数を追わない
3) 従業員の知的創造を、さらに向上させるための知財のサポートシステムの構築
4) 保有する産業財産権の見直しと他社攻撃戦略
5) 競合他社を潰すための知財戦力と産業財産権の獲得
6) 権利化業務は外部の有力な特許事務所にできる限り一任し
知財部は他部門との関係で知財戦略を構築する
7) 海外でのリスク管理の徹底化
8) 海外での模倣、技術流出の防止対策の徹底化
9) 国内はむろん海外においても有能且つ実力ある弁護士・弁理士とのネットワーク化
10) 経営会議において知財戦略や知財の貢献度、知財の収益力を報告でき得る態勢
今後、グローバル化が進行する中で企業にとって知財は最重要資源であると同時に攻撃材料で、しかも企業ビジネスに大きく貢献していると胸はって社内発表でき得るような役割と使命を知財部は顕示すべきである。
そのためにも外部の有力且つ有能な特許事務所で、弁理士が企業戦略を理解且つ提言できる事務所と提携すべきである。