1.知的財産推進計画について
本年も残り1ヶ月となりましたが、本年度7月に政府の知的財産戦略本部が、「知的財産推進計画2014」を発表しております。
その概要は、重要施策として4項目を挙げており、その第1は産業競争力強化のためのグローバル知財システムの構築、第2は中小・ベンチャー企業の知的マネジメント強化支援、第3はデジタル・ネットワーク社会に対応した環境整備、第4はコンテンツを中心としたソフトパワーの強化にある。
2.世界最速・最高品質の特許審査
前記重要施策の第1テーマの中に、「世界最速・最高品質の特許審査」の実施及び知財システムの国際化の推進が小テーマの一つとして挙げられているが、「世界最速の特許審査」は必要であろうか。企業にとって審査スピードはある程度必要であるが、それよりも重要なことは、審査によって得られた特許権の安定性である。すなわちスピードよりも権利の安定性を求めているのである。
企業が権利活用として、例えば権利行使した場合やライセンス交渉した場合に容易に無効理由となる公知資料としての特許公報が発見され無効になることが最悪の事態である。しかもその公報が本来なら審査段階で発見されなければならないものが後日発見されたり、さらには無効審判段階で審判官が職権にて発見されたりして無効になるケースがある。
このような審査を行っていては到底特許庁の審査の信頼性を欠くことになるばかりか、審査を信用して権利行使した権利者の信用失墜になるのである。
いずれにしても重要な点は、審査スピードよりも審査の信頼性を高めることを最優先すべきである。
3.中小・ベンチャー企業に対する強化支援
中小・ベンチャー企業に対する知財支援は常に政府の政策として挙げられているが、その支援策が問題である。
その内容を概説するとモデルケースを例示するケースや知財のシステムを挙げているが、中小企業にとって最重要課題は、オンリーワンの技術を国内のみならず海外にも出願して権利化したいが、費用が高額である点に尽きる。このような中小企業の声からすれば政府は少なくとも半額又は全額費用負担する等大胆な支援策を講じることが我が国経済にとって最重要な中小企業対策である。
4.紛争処理機能の在り方
現実の侵害訴訟やそれに伴う損害額の認定に置いて重要な問題点がある。まず前者にについては特許法104条の3の規定で、この規定は廃止か修正すべきである。修正案としては「明白な無効事由」がある場合にのみ権利不行使を採用すべきである。さらに後者については「寄与率」の概念の明文化又は運用における基準の明示化が必要である。私はそもそも寄与率が明確な場合を除き、寄与率なる概念を廃止し、特許法102条の推定規定自体によって損害額を推定すべきであって、「寄与率」なる概念を廃止すべきと考える。
5.むすび
2015年以降は、この政府の諸策をベースにサン・グループは各企業の知財環境や企業動向、さらには企業ニーズに対応すべく、より信頼性の高い業務を遂行すべく所存ですので何分にもよろしくお願い申し上げます。