1.本年度最終月と今年の知財動向
本年度も最終の12月となりましたが、今年も知財業界は経済の動向や国際化の動向によって、例えば特許法等の一部改正(職務発明規定の改正による発明の会社帰属等)や新商標の保護拡大等多くの知財の改革や動向がありました。
私の最近の主たる業務は、侵害鑑定や知財紛争の対応、さらには知財訴訟への対応業務にあります。
これらの業務に共通する点は、侵害成否の判断であるが、このこと自体は私の弁理士生活45年間の主たる業務内容で、その結果感じることを要点のみ解説します。
2.特許権、実用新案権の侵害成否
特許権・実用新案権の侵害成否の大前提は、特許(実用新案登録)請求の範囲に侵害品が属するか否かの判断である。
特許請求の範囲に属するか否かの判断は、単に本件特許発明と侵害品とのみ対比するのではなく、事前に公知資料を収集のうえ公知資料を参酌して行わなければ意義がない。通常、この種侵害成否について代理人としての弁理士や弁護士が介入している場合にはその争点は特許請求の範囲に記載の数文字の文言解釈が争点となる。
特許や実用新案は明細書が存在するため文章の記載内容が非常に重要で、特に特許請求の範囲に記載の文言を如何に解釈するかが争点であるが、その解釈判断には公知資料の参酌や意見書の主張、さらには効果や実施例等の参酌が必要となる。
よって、権利の活用が叫ばれる現在、明細書の記載、特に請求の範囲の記載が特許の生命線となるため、有能な弁理士(侵害訴訟経験者等)の選任が企業の戦略上最重要課題である。
3.意匠権侵害成否
私の経験では、特許や実用新案は文章があり、商標は類否の大原則があるのに比し、意匠権侵害は本件登録意匠と侵害品とが類似するか否かで判断しなければならず、最も侵害成否が難解であり、企業が依頼する弁理士が意匠に強い(経験)か否かによって勝敗が決すると言っても過言ではない。
意匠の類否判断は、物品によっても異なるため、侵害訴訟経験のある弁理士に依頼しなければその判断を誤る場合があり企業にとって大きなダメージとなる。しかも類否判断には公知意匠が左右するため公知意匠の収集力と判断能力が重要となる。
4.商標権侵害成否
商標権の侵害成否も本件登録商標と相手方の使用商標との類否判断であるが、最近の判例動向からも明らかなように、単に外観・称呼・観念という単純な原則のみでは不十分でその使用態様や取引実情、さらには需要者や取引者の認識等を総合的に評価して類否判断をしなければならないため、商標専門の弁理士で且つ侵害訴訟経験のある弁理士を選任することが重要である。
5.企業が依頼する弁理士とは?
弁理士や特許事務所も数多くあるが、企業がこれら産業財産権の侵害成否について相談や依頼する弁理士が侵害訴訟や侵害紛争を数多く経験しているか否か事前にチェックして依頼すべきである。
弁理士の数多くは出願系の権利化業務のみで、紛争や侵害訴訟の経験ゼロという弁理士が非常に多い(ほとんどである)。
よって、この種侵害系の判断や紛争、訴訟については、その経験と手腕のある弁理士と調査能力のある事務所に依頼すべきである。
サン・グループ所属の藤本昇特許事務所や調査企業のネットスは侵害系を数多く経験していることは判決例等を参酌していただければ明らかですので、侵害紛争については、お気軽に御相談下さい。