1.はじめに
弁理士歴54年の私が最近つくづく感じるのは、企業間競争がグローバルに激化する最近の状況下において、企業の生き残り戦略あるいは成長戦略が問われ、企業価値の向上に努めなければ企業の成長はないと言っても過言ではないと思うのである。
その成長の源泉または起爆剤となるのが知財戦略である。企業によっては未だ従来型の権利獲得を目的とすることが知財の使命であると考えている企業も数少なくないのである。
現在そして将来、知財は企業の経営や事業に貢献し、その結果企業が稼ぐことができ成長しなければならないのである。そのためには、知財の戦略家が必要であり、社内にそのような人材がいないならば外部の弁理士で知財の戦略家として評価されている人材に外注又は委任すべきである。
2.知財の戦略家が実践する知財戦争戦略
戦争には、必ず「守り」と「攻め」がある。
(1)知財分野における「守り」とは?
①事前の調査(調査網の構築)
競合他社の技術や特許動向並びに市場動向を調査して、競合他社が自社より先行していないか、先行している特許や意匠・商標の権利が存在していないか否か、特に自社開発の技術や製品が他社で先行して権利化されていないかの事前調査は最重要な守りの戦略である。
②自社の技術・製品についての権利化
他社が攻めてくる前に自社の技術や製品について自社の特許や意匠を早期に権利化しておくことは、他社からの攻撃に対応できる守りの戦略である。
③証拠保全対策
自社が先行して技術開発を行い製品化していたが、自社の事業化前に他社が権利化しておりその権利で攻撃された場合には、いくら他社の出願日より先に開発し事業の準備行為を行っていてもそれを立証する資料(先使用権立証)がなければ製造・販売できないケース等があるため、開発時から事業化迄の証拠を保全する体制が重要な守りの戦略である。
(2)知財分野における「攻め」とは?
競合先を攻め市場から他社を排除して市場を独占できる理論が特許理論である。市場を独占できるならば最大の収益を得ることが可能であることは言うまでもない。
問題は「攻め」の武器化である。知財の武器としては特許・意匠・商標があるが、特に特許と意匠の権利を如何に獲得するかが重要で、権利化は容易ではあるが権利化された権利の範囲(武器の強弱)が最重要である。
権利があっても他社に安易に回避されるようでは武器の価値がない。戦争である以上、相手の製品の製造・販売を確実に中止でき得るような権利(武器)でなければならないのである。
知財は100点満点はないが、武器としての最大の価値化を図るべきで、安易に非侵害となるような権利では意味がないのである。そのためには、武器化戦略ができる戦略家としての弁理士の指導やサポートあるいは戦略家の弁理士に出願から権利化を依頼すべきで、単なる事務屋的弁理士では役に立たないのである。
3.まとめ
正に知財は頭脳戦争であるため、「守り」と「攻め」の戦略が最重要となり、そのための知財の戦略家が企業の内外に必要である。