1.記念論文集について
弁理士藤本昇の喜寿を記念して、藤本昇の関係者総勢37名による記念論文集「最近の知的財産における諸課題」なるタイトルの本が2024年9月24日に発明推進協会より発行されました。
この論文集は多士多才な著者による記念論文集で、一般的な記念論文集とは異なり知財関係者の「読み物」として極めて面白く興味のある読み易いものであります。
特に著者が企業の知財関係者・学者・弁護士・弁理士・特許情報分析者と多士多才で知財関係者の総集であり、しかも知財業界においては有名な先生方であることが特色であります。
2.内容について
内容的には、第1章が「企業と知財」、第2章が「特許(発明)」、第3章が「意匠(デザイン)・商標・不正競争防止法」、第4章が「AI・著作権」、第5章が「知財紛争・知財訴訟(損害賠償等)」、第6章が「海外」、第7章が「知財情報の調査・分析」と、第1章から第7章まで多岐にわたる内容をカテゴリー別に整理しているため、極めて興味のあるカテゴリーを読解できます。
しかも、本のテーマである「最近の知的財産における諸課題」にマッチした内容となっています。カテゴリー別に概説すると下記のとおりです。
第1章 企業と知財
①企業におけるライセンス交渉について
②BtoB企業の知財・無形資産の投資活用について
③知財活動の20年間の歩みとこれから
④企業の知財活動と意匠権の役割
⑤現場からみた産学連携における知財の課題
⑥知財情報の戦略的活用の進化と企業の成長
⑦知財経営に向けて
第2章 特許(発明)
①裁判例からみた発明発掘のポイント
②数値限定発明における進歩性判断の現状と課題
第3章 意匠(デザイン)・商標・不正競争防止法
①仮想空間と不正競争防止法の形態模倣規制
②意匠保護の現代的課題
③商標法における権利濫用法理ーのれん分け事案に焦点を当ててー
④不使用取消審判(商標法50条1項)における駆け込み使用について
⑤我が国のコンセント制度の内容及び懸念事項
⑥商品の部分の形態に対する標識法による保護
⑦意匠法3条2項の判断手法について
⑧建築物の意匠登録は景観を変えるか
⑨機能に関連した形態は保護されないか
⑩意匠制度135年の変化
⑪ファッションアイテムの商品等表示性についての一考察
第4章 AI・著作権
①AIから生成AIに関する著作権問題の概要
②20年後の弁理士のあるべき姿
③工業デザインの著作権による保護
第5章 知財紛争・知財訴訟(損害賠償等)
①知的財産紛争とADR
②知的財産権侵害と取締役等の責任の新局面
③プロダクト・デザインを保護対象とする場合の損害論の一考察
④パブリシティ権侵害に対する損害賠償額の認定
⑤知財紛争処理についての実務上の考察
第6章 海外
①韓国における技術流出防止法制
②ASEANの知財関連課題と日本の貢献
③我が国の法整備支援の現状と課題
④中国実用新案制度についての一考察
⑤中国意匠制度及びその沿革
⑥アフリカの知財制度と農作物のブランド化
第7章 知財情報の調査・分析
①特許権侵害性調査における事前検討と検索式の作成及びその注意点
②藤本昇先生代理案件の知財ミックス分析
③知財情報活用の変遷と知財情報トレンド
以上のように、本記念論文集には最近の知的財産について検討しなければならない重要な課題について問題提起されていますので、現在・今後多いに検討する課題としての教訓を与えてくれていますので、一読の価値は多いにあります。