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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]権利侵害や不競法違反の警告書を受領した場合の対応策

2023年11月09日

1.はじめに

 最近、メーカーのみならず多数のメーカーから商品を仕入れて販売している小売業者(例えば100円ショップ等)等が産業財産権(特許・実用新案・意匠・商標)を侵害している、又は不正競争防止法2条1項3号(他人の商品形態の模倣)に違反しているとの警告書を受領し、当方に相談されるケースが多発している状況にある。

 その要因は、現在の企業間競争の激化と権利意識の向上、さらには産業財産権活用による武器化現象が生じていることが主たる要因であると考えられる。

 このような相談ケースの場合、被警告企業としてはその対応如何によってその商品の販売、引いては事業に大きな影響を与える場合があるので、その対応策は極めて重要である。以下法域によってその対応策を説示する。

 

2.特許権侵害警告の場合

 まず、第1に相手の特許権の内容や出願から登録されるまでの出願経緯を調査検討(特に意見書や補正書が提出されている場合にはその内容をチェック)すること、第2に当該出願日前の公知資料や公然実施の有無等を調査すること(時には特許権者自身が出願前に見本市等に自ら展示していないか、あるいは商品の売込みをしていないか等)、第3に特許権を侵害しているか否か、経験豊富で実力ある弁理士に侵害鑑定を依頼すると同時に前記公知資料によって無効の可否を判断してもらう。

 最終的に侵害で無効化できないと判断された場合には、その対応が重要となる。すなわち製造、販売やネット掲載による販売の申出行為等を直ちに中止するのか、在庫分をどうするのか、設計変更して侵害回避が可能か、さらには過去分を損害額として支払うのか等その対応が重要であるが、その場合権利者又はその代理人と交渉することも極めて重要である。その際、交渉力に強い弁理士に依頼することも一策である。

 

3.実用新案権侵害警告の場合

 実用新案は無審査で登録されているため、特許庁の技術評価書の提示があるのか否か並びに該登録実用新案が有効か否かが第1に検討することで、有効であるならばその後は前記特許権と同対応である。

 

4.意匠権侵害警告の場合

 意匠権の場合、その登録意匠と同一又は類似の公知意匠(内外国の意匠公報のみならずカタログ、雑誌、新聞等の公知意匠)を調査することが最重要。

 特に意匠は物品の外観形態であるため、その形態に近似する公知意匠が存在する場合が数多くある分野もあるため、公知資料調査は生命線である。

 次に意匠権侵害か否か、すなわち意匠の類否判断は極めて難解であるため、意匠に強い弁理士に相談して鑑定してもらうことが重要。その他の対応は特許権と同様。

 

5.商標権侵害警告の場合

 特許・意匠の公知資料調査と異なり、第1に商標が類似するか否かの判断が最重要である。第2に使用している商標の変更が可能か否かも検討の必要はあるが、まずは侵害成否の判断で侵害であるならば、その後の対応は原則前記特許権と同様。

 尚、商標については、同一でない限り自らも出願しておくことが重要である。

 

6.不正競争防止法2条1項3号違反の警告の場合

 同号は他人の商品形態を模倣する行為を禁止する条文であるため、模倣したか否か(他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一形態の商品を作り出すこと)が最大の争点である。

 しかるに、他人の商品形態と実質的に同一か否かの判断は極めて困難な場合があるため、専門家である弁理士(弁護士)に相談すべきであると考える。但し、相手方の商品が日本国内において最初に販売された日から3年経過していれば、本規定は適用されないため、相手方の商品の最初の販売日をネット等によって調査することが重要。その後は前記特許権と基本的には同対応である。

 

7.むすび

 上記のように警告書が届いた場合には、役員はむろん営業現場等ともその情報を共有し、今後どのように対応するのかは事業部、営業部の意向を踏まえて総合的に検討すべきである。その際は、相手方への窓口を社内か外部の弁理士(弁護士)にするのかを検討すべきであるが、この種の知財紛争経験が豊富で実力ある外部の弁理士、弁護士を窓口として対応してもらう方が得策である。

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