1.はじめに
最近の経済は、エネルギー分野やAIによる技術革新、半導体の争奪戦等により企業間競争は内外ともに激化傾向にある。そのために企業は自社技術の開発や新規事業、M&Aによる投資等あらゆる観点から成長戦略を模索しているのである。その中核として知的財産戦略がある。
2.知財は企業の頭脳戦争
私は本年で弁理士登録53年目に突入しているが、その長き経験から知財は正に頭脳戦争であると考える。知財による防衛力と攻撃力を考え強化することにより、他社との競争に打ち勝つもので、知財力は企業間競争に重要な決定力となる。
3.知財の防衛力
(1)自社技術や自社製品を守る(防衛)
新たな技術や創造物を特許、実用新案、意匠、商標による権利化によって、他社の模倣を防止し、接近行為を許さない戦略が重要。
(2)先行企業(先行防衛)
2050年のカーボンニュートラルや人材不足とロボット化や自動化等将来有望な技術分野において、他社に先行して技術開発し知財化して先行企業となる戦略が重要。
(3)防衛力強化と防衛網の構築
特許権や意匠権も1件の権利で完全に守ることは困難であるが、その防衛網(特許網)を考え特許の分割や知財ミックス等によってその保護範囲を拡大強化することが重要である。
このような防衛力強化としての防衛戦略には内部の戦略家や外部の戦略的弁理士が必要不可欠である。
4.知財の攻撃力
(1)他社に脅威となる武器化戦略
知財分野において、企業は特許権等の数を重視する企業も未だ存在するが、知財力は武器(特許権等)の数ではなく、如何に強力な武器を保有するかが重要である。
強力な武器とは競合他社に脅威となる権利や模倣や接近行為を十分に阻止できる権利の獲得である。
(2)武器の活用と金を稼ぐことの重要性
武器である権利を保有していれば市場の進入を最大限阻止できて市場の独占が可能となる他、競合企業にライセンスを許諾することも可能となる等直接又は間接的に武器なる権利の活用によって金を稼ぐことにもなるのである。そのためには強力な武器の製造(出願)が必要で、Aクラスの弁理士に依存するところが大である。
5.知財の情報基盤の整備と監視体制の強化
実際のウクライナとロシアの戦争においても現在は情報の管理及び監視が極めて重要で、知財の世界においても技術動向や他社動向等の情報の収集と分析及びその対策が企業にとって極めて重要である。
さらに自社の技術や製品が他社の権利を侵害していないか、あるいは他社が自社の権利を侵害していないかの監視体制が社内で十分にできているのかが企業経営や事業戦略上極めて重要である。
仮に社内で無理あるいは不十分であるならば、外部のネットスのような知財情報企業と連携して対応することが重要である。