1.一部法改正
第211回国会で『不正競争防止法等の一部を改正する法律』が、本年6月14日公布されました。この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において施行されます。
今回の法改正の主要な項目の概要は下記のとおりです。
2.不正競争防止法2条1項3号(商品形態の模倣)の改正(メタバース関連規定)
不正競争防止法2条1項3号の規定に「電気通信回線を通じて提供する行為」を追加し、商品形態の模倣行為について、デジタル空間上でも不正競争行為の対象とし、差止請求権等を行使できるように改正されました。
この改正によって、メタバース等仮想空間において他人の商品形態を模倣した商品を画像で表示して商品提供することは違法となりました。
3.不正競争防止法2条7項(営業秘密・限定提供データの保護強化)
ビッグデータを他社に共有するサービスにおいて、データを秘密管理している場合を含め、限定提供データとして保護し、侵害行為の差止請求等を可能とする改正。
「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報をいいます。
4.意匠法の一部改正(新規性喪失の例外規定)
意匠法4条3項及び同60条の7の1項関係の改正。
改正前は、新規性を喪失するに至る起因となった意匠登録出願人の2以上の行為があったときは、全ての行為の起因事実を証明する証明書の提出が必要であったが、今回の改正によって、「2以上の行為のうち、最先の日に行われたものの一の行為について証明書を提出すれば足りるものとする。」と改正されたため、最先の日に行われた新規性喪失の行為の証明書の提出で足りることとなり、手続上極めて簡便となりました。
5.商標法の一部改正【重要】
(1)商標法4条1項8号関係で、自己の名前で事業活動を行う者等がその名前を商標として利用できるよう、氏名を含む商標も一定の場合には他人の承諾なく登録可能となると改正。
(2)先登録権者の同意(コンセント制度の導入)
他人が既に登録している商標と類似する商標は登録できないが、今回の法改正によって先行商標権者の承諾があり、かつ出所混同のおそれがない場合には登録可能となりました(商標法8条1項、2項等関係)。
この改正は、我が国において初のコンセント制度の導入として極めて重要な意義があり、実務上特に重要でこれによって先登録者との利害調整が図られることとなりました。
6.上記改正点は、主要な項目であって、それ以外にも手続規定の見直し(特許法等)や国際的な事業展開に関する不正競争防止法の一部改正もありますが、詳細は特許庁のWebサイトで御確認下さい。
・経済産業省 特許庁. 不正競争防止法等の一部を改正する法律(令和5年6月14日法律第51号)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/hokaisei/sangyozaisan/fuseikyousou_2306.html(参照:2023年7月4日)
また、ご不明な点はサン・グループに御連絡下さい。