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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]模倣行為と接近行為の法的問題

2023年05月15日

1.はじめに

 最近、テレビドラマで『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ)が放映され、知財関係者で話題になっているが、「パクリ」とは本来的に「他のものを真似ること」を意味し、法的用語としては「模倣」を意味する。

 これに対し「他のものに近づける」ことを「接近行為」というが、接近行為と模倣行為とは知的財産法上その違法性が異なる。

 

2.模倣行為と違法性

 模倣行為が知的財産法上問題となるのは、特許(実用新案)、意匠、商標、不正競争防止法、著作権法との関係である。

(1)特許(実用新案)法

 特許法、実用新案法は、技術を保護する法律であるが、その保護範囲はあくまで特許請求の範囲に属するか否かで決する。従って、一般的には他人の技術が特許や実用新案として登録され、その特許請求の範囲に記載された内容に該当する技術をそっくり模倣して製品等を製造、販売する行為は明らかに特許権(実用新案権)を侵害する違法行為となる。

 

(2)意匠法

 意匠は、原則として物品の形状、模様若しくはこれらの結合であって、物品の外観形状(デザイン)を保護する法律で、登録意匠と同一又は類似する物品の製造、販売等は意匠権を侵害することになる。従って、「模倣行為」は明らかに意匠権侵害行為に該当する。

 

(3)商標法

 商標は、文字、図形、記号等いわゆる商品の名称や図形等ブランドを保護する法律で、他人の登録商標と同一又は類似するブランドを使用して商品等を販売する行為は商標権侵害行為に該当する。

 

(4)不正競争防止法

 不正競争防止法は、競業秩序を保護する法律で、模倣行為との関係では、同法2条1項1号、2号(周知、著名な商品等表示の保護規定)及び同3号(商品形態の模倣防止)と関係し、他人の周知、著名な商品の形態や商標等を模倣する行為は同1号又は同2号に違反する違法行為になる。

 周知、著名ではないが、他人の商品の形態を模倣すると同3号に違反する違法行為となる。ここに「模倣する」とは、「他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出す」ことを意味する。

 

(5)著作権法

 著作権法は、著作物(文芸、学術、美術、音楽の範囲に属する創作物)を保護する法律で、他人の著作物を模倣する行為は、複製行為に相当し、複製権や著作者人格権を侵害する違法行為となる。

 

 以上のとおり、他人のものを真似る「模倣行為」は上記各法律に違反する違法行為または違法のおそれのある行為となる。

 

3.接近行為と違法性

(1)接近行為とは

 接近行為とは、他のものの模倣ではないが、売れ筋商品や有名商品に近づけた商品等の製造、販売行為をいう。接近行為は、基本的には上記他人の特許、実用新案、意匠、商標の各権利を侵害することなく近づける行為である。また、不正競争行為にも該当しないように近づけて行う行為である。

 しかしながら、これらの行為が時には特許権等の産業財産権を侵害するか否かの紛争に発展する場合がある。さらに不正競争防止法2条1項1号との関係で違法行為に該当するケースもある。

 

(2)接近行為と違法性

 接近行為は、接近者が明らかに産業財産権を侵害しないと判断していても後日紛争や訴訟になって侵害であると認定され得るケースもあるので、侵害成否の判断は事前に十二分に判断したうえで商品等の製造、販売行為を行う必要がある。

 不正競争防止法2条1項1号に該当するか否かの判断も極めて微妙なケースがある。特に接近行為は、ヒット商品等売れ筋商品へのフリーライドの意図がある場合があるため、不競法違反となるケースもある。

 

(3)権利者、先行者のリスク対策

 権利者や先行者にとってヒット商品となる商品や開発に大なる投資をした商品については、接近商品が販売されることを事前に予測して、各産業財産権獲得のための戦略を出願前に行うことが必要不可欠である。さらにヒット商品になる可能性がある商品については、ネットやマスコミ等の広告宣伝媒体を活用して、商品の形態やブランドを周知・著名化することも重要なリスク対策である。

 以上、模倣行為と接近行為の法的問題、特に違法性について言及したが、これらの違法性の判断は極めて重要で微妙なケースがあるため、能力と実績のある弁理士や弁護士に事前(製造、販売前)に相談すべきである。

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