1.出願の目的
企業にとって出願によって権利化することは、技術や製品のデザインの保護戦略(防衛戦略)と他社の市場への介入を阻止するための攻撃戦略の二面性があるが、いずれにしても出願によって権利化することが目的ではなく、前記防衛と攻撃の二面性から高価値化権利の獲得により、企業ビジネスに貢献する権利によってビジネスの優位性やビジネスへの貢献を図ることが目的である。
2.出願前の戦略
私は本年弁理士登録53年目に突入しているが、そのポリシーは『知的財産は企業ビジネスに貢献しなければ意義がない』との一貫した哲学に基づき業務を遂行してきた。
従って、出願を受任する場合にその出願の企業や研究・開発部門のバックグラウンドを知ることを第一義的に考え、発明や意匠の技術的、デザイン的背景を知るために発明者や意匠創作者との事前協議を最優先したり、ケースによっては開発の上流段階から企業に入り込み、ネットスのサーチャー等とともに開発段階から企業の技術者やデザイナーと打ち合わせ、あるいは事前調査を行うことにしている。
このように出願前に十分な事前打ち合わせや事前調査をすることによって、従来技術を知るとともに発明の課題を知ることができるため、出願戦略が前記目的に対応して可能となるのである。
弁理士法人藤本パートナーズでは、単に依頼された発明やデザインの内容をヒアリングして出願する事務屋的な出願を行うのではなく、あくまで企業の目的に対応できる出願戦略を事前に検討したうえで出願を行うことが基本原則である。
出願前の事前会議を特許(意匠)開発会議と称し、企業側から発明者等の技術者、知財担当者、時にはビジネスセンスのある人が参加し、我々外野の弁理士とともに出願戦略会議を行っている。
3.出願時の戦略
出願前の前記事前戦略会議で出願内容を十分に検討しているので、出願時にはその内容に基づき明細書を作成する、あるいは意匠出願図面等の作成を行うことが極めて容易となる。但し事前の出願戦略会議で、特許の場合には、何件出願するのか、分割出願や意匠への出願変更まで予測しておくことも重要である。
特に特許の場合には、請求項の数や請求内容(クレーム)の記載が最重要となるため、従来技術との関係や事業内容との関係、競合他社の動向等総合的判断のうえ、クレームの記載内容を考えることが必須不可欠で、単に登録のみを目的としてクレームを記載することは後日、権利行使できない事態になるリスクがあることを予知しなければならないのである。
意匠の場合には、出願前にデザインマップを作成する等によって、その製品形態のバリエーションを考えたうえで何件出願するのか、全体か部分意匠か、あるいは関連意匠を何件出願するか、その事前対策が特許以上に重要となる。
4.権利化と権利活用
権利を獲得した場合に、その権利が他社に脅威となるのか、市場を独占できるのか、他社に模倣品や接近品がないのか等企業として権利を武器として活用できるのか多角的に検討し、権利を活用して儲けることが重要な知財戦略である。
そのためには、出願戦略が最重要戦略であり、外部の有能な弁理士の活用も企業にとって最重要テーマであることを忘れてはならないし、見直すべき時期である。