1.コロナ禍における働き方の変容
今年1年間も社会はコロナに振り回される事態になっているが、その結果毎日出勤型の勤務体系が崩れ、自宅等のテレワーク型に変容している。
このことは、企業経営者目線からすればあり得ない働き方であると考える人も少なくはないが、事実は意に反しテレワーク型が業務の効率化に寄与し生産性の向上に直結するメリットに気づいたことであろう。
今後、益々人の働き方と業務の生産性との関係がさらに変容することになるであろう。正に時間や無駄を省き、家賃等のコストの削減化にも直結するのである。
このことは、全ての業務において従来型の労働体制や意識を見直し、何が業務効率を向上するかを検討すべき時期に到来しているのです。今こそ職場環境や業務内容等を見直すべきである。
一方、テレワークの弊害としてコミュニケーション不足となり、人間に最も必要な会話不足に陥ることとなっている。
この点を如何に解消すべきか、同時に検討すべき最重要課題である。人は1人では生きていけないのである。コミュニケーションや情報共有は企業の生命線であることを忘れてはならないのである。
2.知財紛争の多発
コロナ禍において、企業人に時間的余裕ができたことにより、自社の産業財産権を見直し、市場の調査が可能となった結果、自社商品が他人の産業財産権を侵害しているおそれがあることを知り、あるいは他社商品が自社の産業財産権を侵害しているおそれがあることを知る機会が増加したのである。その結果、侵害警告書を発する、あるいは受領する事態となり知財紛争が増加したことも事実である。
3.企業の経営や事業に貢献する知財戦略への変容
各企業とも出願して権利化することが目的ではなく、権利を活用して経営や事業に貢献し企業として知財力で稼ぐことの必要性を痛感した年であった。
正に「知財はビジネスに役立たないと価値がない」との私の50年前からの哲学が遅まきながら、最近やっと企業経営者や知財関係者が意識して業務に反映してきたのである。
4.特許出願の非公開制度の導入
本年5月11日、経済安全保障推進法が成立し、国家の安全を損なう機密情報の保全を図る目的で、特許出願に対し非公開制度が導入されることになった。
対象技術としては、暗号技術、通信技術、先端コンピュータ技術、ドローン技術、原子力技術、武器技術等が考えられる。
これらの技術で安全保障上機密な発明として保全審査で保全の対象であると認定(特許庁の1次審査、内閣総理大臣の2次審査)され、保全、指定されると、出願公開・拒絶査定・特許査定の留保、出願の取下げ・放棄の制限、外国出願の禁止等の制約対象となる。
いずれにしてもこの規定は極めて要注意な規定であり、今後、発明者の保護や補償、企業の戦略等が重要な課題となるので関係企業は注視していただきたい。
5.むすび
2022年度も知財の動向が大きく変化、変容した。今後も経済や国際環境の変化によって知財は変革されることが予想される。
サン・グループはこれらの変革や変容に対応して企業を支援するので、次年度もよろしくお願いします。