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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]特許法等の一部法改正について(令和4年10月1日施行)

2022年08月22日

今般、コロナウィルスの感染拡大を契機として同感染対策並びに権利保護の見直し等の観点から下記項目が法改正され、本年10月1日より施行されることになったのでその概要をおしらせする。

 

1 コロナ対策に対応したデジタル化等の整備

① 審判口頭審理のオンライン化
【特・実・意・商】

特許の無効審判等は、従来、審判廷に出頭して対面で口頭審理。これを、審判長の判断でウェブ会議システムでも可能とする。

② 印紙予納の廃止・料金支払方法の拡充【工】

特許料等の支払方法について、口座振込等による予納(印紙予納の廃止)や、窓口でのクレジットカード支払等を可能とする。

③ 意匠・商標国際出願手続のデジタル化【意・商】

意匠・商標の国際出願の登録査定の通知等について、(感染症拡大時に停止のおそれのある)郵送に代えて、国際機関を経由した電子送付を可能とするなど、手続を簡素化。

④ 災害等の理由による手続機関徒過後の割増料金免除【特・実・意・商】

感染症拡大や災害等の理由によって特許料の納付期間を徒過した場合に、相応の期間内において割増料金の納付を免除

2 デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し

① 海外からの模倣品流入への規制強化【意・商】

増大する個人使用目的の模倣品輸入に対応し、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を商標権等の侵害として位置付ける
ここ数年、個人使用を目的として国内に違法な商品を持ち込み、ヤフーオークションやメルカリ等のネットオークションに展示販売しているケースが続出している。
法は「業として」を要件とするため、個人使用には適用できず、安易に国内に持ち込まれるケースがあり、商標権者等はその法対策を求めていた。
今回その対策として、個人使用であっても商標権等の侵害であると位置付け権利保護強化を図ったのである。

② 訂正審判等における通常実施権者の承諾要件見直し【特・実・意】

デジタル技術の進展等に伴う特許権のライセンス態様の複雑化に対応し、特許権の訂正等における通常実施権者(ライセンスを受けた者)の承諾を不要化

従来、訂正審判を行う場合にその特許権に通常実施権が改訂されている場合には、通常実施権者の承諾が必要となっていたが、この承諾を求めるのが事実上煩雑で、特に複数の通常実施権者が存在する場合や通常実施権者との連絡が困難な場合等には可正審判請求することが事実上困難な場合があった。
今回の法改正によって通常実施権者の承諾が不要となったことにより訂正審判請求等の手続きが容易となった。

③ 特許権等の権利回復要件の緩和【特・実・意・商】

手続期間の徒過により特許権等が消滅した場合に、権利を回復できる要件を緩和する。

3 知的財産制度の基盤強化策

① 特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入【特・実・弁】

煩雑化した特許権侵害訴訟において、裁判所が広く第三者から意見を募集できる制度を導入。

社会的影響の大きい事件において、裁判所が幅広い意見を踏まえて判断できるよう当事者の証拠収集を補完。

弁理士が「第三者意見募集制度」における相談に応じることを可能とする。

② 特許料等の料金体系見直し【特・実・意・商・国】

審査負担増大や手続のデジタル化に対応し収支バランスの確保を図るべく、特許料等の料金体系等を見直し

4 今回の法改正は、手続的な点が多いが、実体的な点では、海外からの模倣品流入への規制強化、訂正審判等における通常実施権者の承諾不要は極めて実務上意義ある改正なるため、これらの点については留意してもらいたい。

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