意匠法が法改正されていますが、①複数意匠一括出願手続、②物品の区分の見直し、③手続救済規定の整備については、本年4月1日より施行されます。それに伴い、意匠法施行規則等の一部改正も行われておりますので、ご案内いたします。
※ 複数意匠一括出願手続の導入
意匠登録出願を行う際、現在、一意匠一出願の原則が採用されていますが、今回の改正によって、複数の意匠を一括出願することが可能となります。具体的な手続きは経済産業省令で定められますが、概略、以下のようになります。
(1)一括出願の対象意匠について
①一出願が可能な意匠についての規定はなく、複数意匠が類似しているか否か、あるいはロカルノ分類が共通するか否か等は一括出願の要件となっておりません。
あくまで複数意匠一括出願とは、従来個別に行っていた意匠出願を一括して出願できる手続きです。
②2以上で100以下の意匠登録出願を一括して一出願することが可能となります。但し、分割出願、変更出願、補正却下後の新出願には適用されません。
(2)一括出願番号の付与について
①複数意匠一括出願手続の願書が受理されると、一括出願自体に出願番号(一括出願手続の番号)が付与されます。
②一括出願について後日書面を提出するときは、一括出願番号(一括出願手続の番号)を記載する必要があります。
(3)一括出願と新規性喪失の例外適用、秘密請求等との関係について
①一括出願の願書に記載した意匠登録出願人の氏名や名称、新規性喪失の例外適用を受ける際の省略記載、秘密請求の旨等、一部の記載は全ての意匠登録出願の願書に記載されていたものとみなされます。
従って、一括出願時に秘密請求を行った場合、一括出願に含まれている全ての意匠に対して秘密請求がなされたものとみなされますのでご注意下さい。
②一括出願で提出された新規性喪失の例外適用の証明書等、一部の書面や書類は、全ての意匠登録出願について提出されたものとみなされます。
従って、新規性を喪失していない意匠についても、例外適用が申請されたものとして取り扱われますのでご注意下さい。
(4)特徴記載について
一括出願については、特徴記載書を提出することはできません。
(5)印紙代(特許庁手数料)について
印紙代は、現在と同様に1出願16,000円であるため、例えば5意匠を一括出願する場合には80,000円(16,000円×5)を一括納付する必要があり、印紙代金が割安になることはありません。
(6)一括出願後の実体審査について
①複数意匠ごとに出願番号が付与(一括出願終了)
一括出願は、あくまで複数意匠を一括出願できるとの新たな手続きであって、一括出願として方式審査が完了すると、一括出願した意匠登録出願ごとに出願番号が付与されます。
複数意匠ごとに出願番号が付与されると一括出願は終了することになり、その後は前記各意匠ごとの出願番号が事件番号として特定されます。
②実体審査(各意匠ごとに審査)
実体審査は、複数意匠の出願意匠ごとに審査されますので、従来と同様に各意匠出願(出願番号)ごとに登録可否の審査がなされます。
③意匠権の発生
複数意匠一括出願を行っても実体審査は全て各意匠の出願ごとに審査され登録されるため、意匠権は各意匠ごとに権利が付与され権利が発生します。
決して一括出願が一個の権利として発生するものではありませんのでご注意下さい。
(7)複数意匠一括出願の願書例(下記URL参照)
( https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/isho_wg/document/18-shiryou/shiryo11.pdf )
上記URL資料の「3.願書様式のイメージ」に記載のように、複数意匠一括出願の願書は、出願人等共通事項と個別の意匠ごと(本例は3件の意匠の一括出願)の記載事項や図面等が必要となります。
※ 複数意匠一括出願と主要国の多意匠一出願との対比
(1)欧州共同体意匠
複数の意匠を一出願に含めて出願可能。但し、ロカルノ分類の同一クラスに属していることが要件。
(2)米国
複数の実施態様を一出願に含めて出願可能。実施態様は、基本的に同一の意匠特徴を有する全体的外観を有すること及び特許性のうえで区別困難な態様であること。
(3)中国
同一製品における2以上の類似意匠あるいは同一種類でかつセットで販売または使用する製品の2以上の意匠(セットもの)は一件の出願として出願可能。
(4)韓国
ロカルノ分類において、同一分類に属する物品であれば100個のデザインまでを複数デザイン登録として一出願で出願可能。
上記主要国の多意匠一出願制度と今回の複数意匠一括出願とは、基本的にその要件等は異なりますのでご注意下さい。
尚、ご不明点がございましたら、お気軽にお問合せください。