1.はじめに
最近、サン・グループ所属の調査企業である株式会社ネットスに依頼される案件で急増しているのが、侵害性調査と無効資料調査であり、藤本パートナーズに依頼が急増しているのが、侵害成否の鑑定と無効可否の鑑定並びに警告・被警告事件に対する対応依頼である。
このように、侵害紛争事件や事前の侵害リスク回避のための対策が、各企業のコンプライアンスの観点からその危機管理と知財の活用が活発化している現状が伺えるのである。
知財訴訟(民事訴訟)は、必ずしも増加していないが、知財の紛争が多発している現状にある。
2.2019年(平成31年1月~令和元年12月)度の判決
裁判所のWebサイト(http://www.courts.go.jp/)によると2019年度に言い渡された特許権,実用新案権侵害事件は、下記表のとおりである。
(パテント2020 特許権侵害訴訟の判例の概観 弁護士高橋元弘氏の論文の表引用)
3.知財紛争の発生要因
最近の特許権侵害等の紛争事件は、中堅・中小企業間のみならず大手企業間においても発生しているが、この要因は特許権等の知的財産は企業にとって権利化が目的ではなく、権利化によってその権利を活用し、企業経営や事業に知財を貢献させることを目的として知財によって稼ぐ意識が強くなっていることの表れである。
一方、企業のリスク対策の意識昂揚によって事前の障害となる権利調査や障害権利の侵害成否や無効可否について、事前に十分に調査,検討する意識と行動が各企業に向上したことにある。
4.今後の対策(プロの弁理士の目線)
弁理士登録50年となった私が企業に申し上げたいことの第1は、現在大きく時代が変容しているため、それに対応したイノベーションの創造の活性化と単なる「モノ」の権利化だけではなく、物の用途,販売等を含めたシステムやソフトに関する特許化を考えること。
第2は、競合他社の技術や特許の情報を徹底的に分析して業界でトップとなる知財戦略をその企業に沿って考え行動すること。
第3は、侵害性や無効性の判断は益々高度化しているため、訴訟経験豊富な実力ある弁理士に相談,委任すること。最後にプロの調査会社や実力と経験のある弁理士との協同作業によって自社の知財業務を見直し、新たに戦略的な知財部を構築することである。
企業の成長戦略の基本は、「技術」 「デザイン」 「ブランド」等の知財戦略にある。