【1】特許法、意匠法等の一部法改正は2020年4月1日施行
1.はじめに(特許・意匠法等の改正)
特許法、意匠法、商標法等の一部法改正が2019年11月1日に閣議決定され、2020年4月1日から施行されることとなりました。
今回の法改正の目玉は、侵害訴訟における立証の容易性と損害賠償額算定の見直し、意匠法の大幅改正にあります。その概要は下記の通りです。
2.特許法の一部改正
(1)中立な技術専門家が現地調査を行う制度(査証)の創設
特許権侵害か否かの判断に際し、侵害者側の製品が入手できない場合や製品を分解しても材料が分からない等の場合に、裁判所が中立公正な専門家を選定し侵害が疑われる者の施設(工場等)に立入り、侵害立証に必要な調査を行い、裁判所に報告書を提出する査証制度を創設することにある。
これによって、製造方法の特許やプログラムの特許、B to Bの製品特許等について権利者側の立証が容易となり、特許権の活用が期待できる。
(2)損害賠償額算定方法の見直し(実用新案・意匠・商標も準用)
①侵害者が得た利益のうち、特許権者の生産能力等を超えるとして賠償が否定されていた部分について、侵害者にライセンスしたとみなして、損害賠償を請求できることとする。
②ライセンス料相当額による損害賠償額の算定に当たり、特許権侵害があったことを前提として交渉した場合に決まるであろう額を考慮できる旨を明記する。
※上記規定の見直しによって、損害賠償請求額を増額できる可能性がある。
3.意匠法の一部改正
(1)保護対象の拡充(画像、建築物の内・外装のデザイン)
①物品に記録・表示されていない画像を、新たに意匠法の保護対象とする。従来は物品が要件であったが、物品と関係なく画像のみが保護対象となる。従って画像の保護範囲が拡大するので、事前の保護戦略が重要となる。
②建築物の外観や内装のデザイン(空間デザイン)が新たに意匠法の保護対象となる。従来は、不動産であることや一意匠一出願の要件を満たさないとして保護できなかったが、今回の改正により飲食店や量販店等の店舗展開企業や住宅、建築、家具、インテリア等の業界にとっては、新たなデザイン保護戦略が必要となる。
(2)関連意匠制度※の見直し
※自己の出願した意匠又は自己の登録意匠(本意匠)に類似する意匠の登録を認める制度
一貫したコンセプトに基づき開発されたデザインを保護可能とするため、
①関連意匠の出願可能期間を、本意匠の登録の公表日まで(8か月程度)から、本意匠の出願日から10年以内までに延長する。
②関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認める。
●この制度によって、デザインのモデルチェンジやデザイン変遷に対応できるため、事前のデザイン保護戦略が重要となる。
(3)意匠権の存続期間の変更
「登録日から20年」から「出願日から25年」に変更する。
(4)意匠登録出願手続の簡素化
①複数の意匠の一括出願を認める。
②物品の名称を柔軟に記載できることとするため、物品の区分を廃止する。
(5)間接侵害※規定の拡充
※侵害を誘発する蓋然性が極めて高い予備的・幇助的行為を侵害とみなす制度
「その物品等がその意匠の実施に用いられることを知っていること」等の主観的要素を規定することにより、取り締まりを回避する目的で侵害品を構成部品に分割して製造・輸入等する行為を取り締まれるようにする。
4.その他
公益団体等(自治体、大学等)が自身を表示する著名な商標権のライセンスを認める等の措置を講ずる。
5.今後の対策
今回の改正、特に意匠法の改正は大幅な改正となりますので、企業の製品開発やデザイン開発にとって極めて重要で、しかも従来意匠登録できなかった住宅や建築物の内外装デザインが保護可能となりますので、今からその出願戦略も含めたデザイン開発を企業は即実行しなければなりません。
今回の意匠法改正についてご不明点等がございましたら、改正業務に直接携わっております弊所弁理士 野村 慎一までご連絡下さい。
また、特許法の改正につきましては弁理士 藤本 昇または、弁理士 中谷 寛昭までご連絡下さい。
詳細は以下のアドレスからご確認下さい。https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/hokaisei/tokkyo/document/tokkyohoutou_kaiei_r010517/02.pdf
【本件に関するお問い合わせ先】
弁理士法人 藤本パートナーズ
TEL 06-6271-7908 FAX 06-6271-7910
副所長 弁理士 中谷 寛昭(E-mail: pat-nakatani@sun-group.co.jp)
副所長 弁理士 野村 慎一(E-mail: nomura@sun-group.co.jp)
【2】ミャンマー商標出願の受付開始
1.ミャンマーにおける商標登録出願の受付開始(予定)
ミャンマーでは、これまで商標法が制定されていなかったため、商標を保護するためには、現地登記法に基づき、登記所における商標の所有権に係る宣誓書(以下「宣誓書」)の登録及び現地新聞を通じた警告的告知(以下「警告的告知」)という手続により、間接的な保護を図るしか手段がありませんでした。
その後、本年1月30日に新たに商標法が制定され、施行日が不確定な状態でしたが、現地代理人の情報によると、2020年1月より6か月間、旧制度下において登記所で宣誓書を登録した商標について、優先的に出願の受付を開始することとなりました。
尚、本書簡に記載の情報は、全て現時点で現地代理人から得た情報であり、今後変更が生じる可能性がありますことをご留意の上、以下ご確認をお願いいたします。
①ミャンマー商業省の非公式の声明によると、旧制度下において登記所で宣誓書を登録した商標については、“soft-opening”期間を設け、2020年1月第一週目から6か月間、優先的に新制度下での商標出願の受理を開始する旨が述べられた。尚、正確な出願受理開始日については未確定である。
*最先で2020年1月1日から商標出願の受理が開始する可能性が出てきました。
②上記条件に該当しない商標、すなわち、過去に一度も宣誓書を登記所に登録していない商標に関しては、2020年7月以降に出願の受理が開始される見通しである。
③現在のところ登記所における宣誓書の登録を行っていない商標であっても、2019年末までに、新たに登記所における宣誓書の登録を完了されることができれば、上記①の優遇措置を享受することが可能となる。
④先願主義が採用されるため、出願日が早い出願が優先して登録される。
【本件に関するお問い合わせ先】
弁理士法人 藤本パートナーズ
TEL 06-6271-7908 FAX 06-6271-7910
商標部 部門長 弁理士 白井 里央子(E-mail: r.shirai@sun-group.co.jp)