1.特許庁長官 宗像 直子氏の言葉
「知財のミカタ」in 福井で行われた(10月30日)、特許庁主催の講演会で長官の宗像氏が発せられた第一声が「みんな、もっと稼ごう」であった。
当日、講師として参加した私はこの一声に驚いた。特許庁長官が「もっと稼ごう」という言葉を発した真の意味とは何か。私は思うに「知財力」を活かして「稼ごう」ということで、知財は正に企業ビジネスに貢献することを特許庁としてアピールしたかったのであろう。
2.知財と企業ビジネス
私は、本年弁理士登録から48年目になるが、私の考えは、「知財はビジネスに貢献しなければ意義がない」との信念である。
企業はむろん弁理士も知財は権利化が目的であるような時代、すなわち大量出願の時代があったが、未だに権利化を目的とする知財人が多数存在する。
権利化は、第一義的に重要であることは当然であるが、権利化後の権利活用を意識してビジネスに役立つ権利化であることが命題である。単なる権利化では意義がない。
そのためには、企業の知財担当者はむろん弁理士も企業の事業内容や経営方針まで予め理解しておくことが重要である。企業は、利益を生む企業活動を行っている以上、長官が言うようにもっと「稼ぎ」「得た利益を次の研究、開発に投資すべき」である。
3.稼ぐための知財戦略
サン・グループ、特に弁理士法人 藤本パートナーズは44年の歴史の中で経験した企業における知財戦略のあり方から、第1に出願前の知財情報の収集・分析(ネットス担当)、第2に事前調査した知財情報に基づき最大価値化、すなわち事業の独占化のための出願前の特許開発会議の実践、第3にOA対応時に審査官等との面談実施、第4に権利化の活用(権利行使、ライセンス等)を行うことによって、企業が稼ぐための知財戦略を実践している。
4.企業の知財リスク回避
企業が知財によって稼ぐことが可能であっても、一方で知財権によって侵害警告されたり侵害訴訟を提起されることによって差止や損害賠償請求されては意義がない。
そのための知財リスク回避も最重要課題で、サン・グループのネットスには最近侵害性調査の依頼が急増している他、藤本パートナーズの弁理士には侵害成否鑑定の依頼が増加傾向にある。
企業の侵害回避対策として重要な事項は、第1に開発段階からの予備調査、第2に製品完成時、販売前の本調査、第3に障壁となる特許権や意匠権等が発見された場合の侵害成否の判断、この判断は訴訟経験が豊富で実力のある弁理士に依頼すべきである。第4に不正競争防止法に違反していないか否かの判断も重要となる。
5.今後の企業の知財戦略
今後、グローバル化がさらに進行する中で、特許、意匠、商標の知財ミックスを考えながら、内外の知財の総合力によって企業間競争に勝ち、知財力で稼げる企業を目指すことが重要である。