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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]意匠制度の大幅な改正動向内容について

2018年10月10日

1.特許庁の動向

 特許庁は、本年意匠制度を大幅に改正することを検討し、その改正内容が公表されました。改正項目は下記1乃至6項目が主たる改正内容です。現時点では最終決定されていませんが、来年度の国会に意匠法改正案を提出する予定です。

 

2.改正項目

1.画像デザインの保護について

(1)現行法
 現行の意匠法(2条2項)においては、物品に記録された画像、物品に表示される画像のように物品が不可欠要件となっている。同様に、画像意匠権の侵害対象も物品を対象とした物品の製造販売等に限定されている。

(2)改正要項
 ①保護対象
  ㋑物品に記録されていない画像(クラウド上の画像、ネットワークによって提供される画像等)
  ㋺物品以外の場所に表示される画像(壁や人体に投影される画像,拡張現実や仮想現実上で表示される画像
   等)
  ㋩物品の機能と関係のない画像(壁紙等の装飾的な画像、映画やゲームといったコンテンツ画像等)

 ②侵害行為
 画像をクラウドサーバーにアップロードする行為、ネットワークを通じて画像を含むソフトウェアを提供する行為。

 以上のように画像意匠については、物品と関係なく保護及び侵害行為を認める改正要項として検討されている。

 

2.空間デザインの保護について

(1)現行法
 現行の意匠法では、建築物(不動産)は保護対象とされていない。また、店舗やオフィス等の内装デザインは、一意匠一出願の要件を満たさないため、意匠登録を受けることができない。

(2)改正要項
 ①建築物(不動産)の外観デザイン
 ②店舗やオフィス等の内装デザイン

 上記不動産を保護対象とすることが検討されている。
 これは、東地判平28.12.19の仮処分事件「コメダ珈琲店事件」決定後、店舗外観について議論されていることも背景にある。

 

3.関連意匠制度について

(1)現行法
 現行の意匠法では、関連意匠の出願は本意匠の公報発行日前までとされており、また関連意匠にのみ類似する関連意匠は登録を受けることができない。

(2)改正要項
 ①本意匠の公報発行日後においても関連意匠の出願を認めるか。
 ②関連意匠にのみ類似する関連意匠の登録を認めるか。
 ③上記のような改正を行った場合、関連意匠の存続期間をどう設定するか。

 上記のように関連意匠をさらに利用しやすくするための拡充改正が検討されている。

 

4.意匠権の存続期間の延長について

(1)現行法
 意匠権の存続期間は、登録日から20年である。

(2)改正要項
 意匠権の存続期間を出願日から25年とする案が検討されている。

 

5.複数意匠一括出願制度の導入について

(1)現行法
 現行の意匠法では、第8条の組物の意匠を除き、第7条で一意匠一出願が規定されているので、1件の出願に複数の意匠を含めることはできない。

(2)改正要項
 欧州や韓国のように、1件の意匠出願に複数の意匠を含める方向で検討されている。
 ①複数の意匠を1出願に含めることを認めるか。
 ②認める場合、1出願できる範囲を諸外国のように制限すべきか。
  ・1出願に含める意匠数に上限を設けるか。
  ・1出願の範囲を制限する必要があるか。

 

6.物品の区分表の見直しについて

(1)現行法
 現行の意匠法では、省令で定める物品区分表に掲げられた物品の区分と同程度の区分を記載していない出願は、拒絶理由の対象とされている。

(2)改正要項
 今後、物品の区分と同程度の区分を記載していない出願であっても、直ちに拒絶理由としないようにすべきか検討されている。

 

3.要注意

 上記1乃至6項目が主たる改正要項ですが、そのうち①の画像意匠については、物品と関係なく保護され、且つ権利行使可能なため、重要な改正となり、クラウドやネットワーク等の業界においては非常に注視する必要があります。
 次に②の空間デザインについては、従来意匠登録できなかった物品分野で、住設関係や住宅関係の分野の業界の方は今からその対策を検討する必要があると思います。
 その他不明な点は、弁理士法人 藤本パートナーズの弁理士野村慎一に御問い合わせ下さい。

 

 

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