SUN GROUP

知財教育・調査・出願・係争など知的財産に関する
あらゆるサービスを戦略的に提供。【大阪・東京】

弁理士藤本昇のコラム

column

ホーム > お知らせ > [コラム]注目判決 : 植物栽培コンテナ事件

[コラム]注目判決 : 植物栽培コンテナ事件

2007年12月01日

1.事件番号

東京地裁平成19年(ワ)第11944号 損害賠償請求事件(平成19年11月22日判決)

2.事件の概要

 本件は、「植物栽培コンテナ及び植栽設備並びに植栽設備の施工方法」について特許権を有する原告が、被告が製造販売した製品と被告が施工した方法が、いずれも特許権の特許発明の技術的範囲に属し特許権を侵害したものであると主張して、被告に対し製造及び販売の差止めと損害賠償を請求した事件である。

3.本件特許権

(1) 特許番号 第3795058号

(2) 【請求項1】
 「少なくとも底板と側壁を有する植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設けることを特徴とする植物栽培コンテナ。」

4.争点に対する裁判所の判断

(1) 植物栽培コンテナの意義
 本件発明の「植物栽培コンテナ」は、育成材充填空間の上端までの空間を外周壁が囲む構成であることを要する。

(2) 側壁の意義
 育成材充填空間の上端までの高さで連続した構成を有することを要する。
 原告は側壁について同一高さで連続した構成を有することは必要でなく、凹凸状のものも含まれると主張するが、本件特許明細書には、外周縁が高低差のある凹凸状となっている側壁は開示も示唆もない。

(3) 被告製品
 被告製品は、本体がパネル状であって、該パネルの外周縁部は水の流出防止のためのものであって、本件発明における「側壁」に該当するものではない。
 従って、被告製品は、本件発明の構成要件Aを充足しないため、その技術的範囲に属しない。

(4) 分割要件違反と無効理由について
 本件発明は、ユニット支持部の上にユニット材を栽置しない植物栽培コンテナをも包含するものであるから、本件原出願の願書に最初に添付した本件原明細書若しくは図面に記載した事項又は同明細書等に記載した事項から自明な事項の範囲外の発明を含むものであり、本件分割出願は分割要件を満たしているとは認められない。よって、出願日の遡及は認められず、無効審判により無効にされるべきものである。

5.寸評

 本件事件について、筆者は被告の補佐人として訴訟活動を行ったものであるが、本件判決は正当な判決で、特に分割要件違反による無効理由があると判断された点は高く評価できるものである。

SUN・GROUPホールディングス株式会社
〒542-0081
大阪市中央区南船場1丁目15-14号
堺筋稲畑ビル2F (総合受付5F)