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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]特許権の価値と有効活用とは?

2008年11月06日

 最近の特許権侵害訴訟において、裁判所は必ずと言っても良い程、「無効の主張をされますか」、「無効審判を請求されますか」と冒頭に被告に聞く。

 このことは、特許法第104条の3の規定によって「無効にされるべきものと認められるときは、特許権の権利行使が許されない」との、いわゆる権利行使制限規定が新設されたことにある。

 2006年度の判決による知的財産権訴訟においては、実に権利者が8割敗訴するという結果がでている他、その敗訴理由中、権利が無効であるとの理由で権利者が敗訴したのが35%もある。

 通常、一般民事訴訟で原告がこのような高比率で敗訴することはあり得ないが、知的財産訴訟においては原告の敗訴率が極めて高く、これでは「何のための知的財産権なのか」、「何がプロパテントなのか」、おおいに疑義のあることである。

 折角、出願人として重要な特許出願が特許化されても、これ程に侵害訴訟段階で無効になると判断されたのでは権利獲得の意義がないのである。

 しかも裁判所において無効の判断がされること自体にも問題がある。技術官庁ではない司法の裁判官が安易に無効の判断をするおそれがある他、技術者でない法律家としての裁判官が無効の判断を容易にして良いのであろうか。

 一方、権利を設定する特許庁の審査・審判の質の低下も問題ではないだろうか。これ程に権利が無効として判断されること自体、審査官や審判官のプライド低下とともに質の低下があるのではないのか。さらには審査段階での調査機関の質の低下も要因ではなかろうか。

 いずれにしても、折角権利化された特許権に基づき権利行使してもこれが訴訟段階で無効になるのでは意義や権利の価値がなくなるのであり、引いては企業の事業戦略や知財戦力に大きなマイナス要因となるのである。

 我が国が知財立国としてさらにその政策を強化するならば、「審査・審判の質の向上」と「調査機関の調査の質の向上」を早急に図るべきである。

 一方、出願人(企業)側としては、出願前の公知技術調査や先行技術調査を予め十分に行ったうえで、出願戦略を考え高質な明細書を起案して、企業にとって価値のある権利(高価値化権利)の獲得を目指すべく戦術を考えるべきで、その際には有能で専門知識と戦略を考えることのできる弁理士に出願を依頼すべきであると同時に指導を受けるべきである。

 今後、権利の活用が益々、我が国企業にとって重視されるべきと考えるが、その大前提として企業ビジネスに価値のある高価値化権利を有効に獲得すべく方向変換すべきである。

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