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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]要注意!新規性喪失の例外適用について

2017年09月26日

1.特許や意匠は、出願前に刊行物に掲載する等公知状態にすると新規性を喪失することになり、特許を受けることができません。

 公知にした日から6ケ月以内に新規性喪失の例外適用を受けて出願した場合には新規性を喪失したものとはみなされないですが、その例外適用を受けるための意匠についての運用が、本年4月1日に改定されていますので解説するとともに、例外適用に関する判決も併せて紹介しますのでご注意下さい。

2.特許・実用新案について

 特許・実用新案については、平成23年の改正によって新規性喪失の適用対象が拡大されるとともに出願人自ら作成した証明書だけでも特許法30条の新規性喪失の適用を受けることができます。

 さらに、同一の発明について複数回公開された場合には、原則としてそれぞれの公開の事実を証明する書面を提出しなければなりません。

3.意匠について

(1)本年4月1日の意匠の審査基準の改定によると、出願人の行為に起因する公開の事実は原則として全てを証明書に記載しなければなりません。但し出願前に公知にした意匠を、この公開に基づいて事後複数回公開した場合には、先の公開意匠について新規性喪失の例外適用を受けていれば2回目以降の公開意匠については公知の意匠に該当するに至らなかったものとされます。例えば製品カタログを取引先に配布することによって公開した後、取引先の注文に応じて製品を納品する場合の2回目の公開意匠です。

(2)第三者による公開

 新規性喪失の例外適用日から出願日との間に第三者が同一の意匠を公開した場合には、原則第三者公開によって公知意匠に該当することになります。但し第三者公開が新規性喪失するに至った意匠の公開に基づくことが明らかな場合には、その公開によって例外適用意匠は公知になったことにはなりません。

 例えば出願人が見本市に出展したことによって公開された意匠とその出展情報が新聞に掲載されたことによって公開された意匠の場合。

(3)複数公開の場合

 複数公開された場合には、原則全ての公開内容を証明書に記載することが好ましいです。むろん省略できる場合もありますが、微妙なケースがありますので、記載するか否かについての必要性については意匠部に御相談下さい。

4.大阪地裁平成28年(ワ)2983事件

 この事件では、生活協同組合のチラシについて例外適用の証明書を提出していたが、コープ連合においてもチラシに掲載されて商品が販売されたケースで、例外適用が生協のみであったため、生協とコープ連合とは法人格が別であることを理由にコープ連合の公然販売が理由で新規性なしとして無効とされた事件です。

5.商品の販売前の納入行為や商談行為も新規性喪失と判断される場合がありますので、これらの行為を出願前に行うと新規性を喪失した公知になるケースがあります。

 例えば東京高裁平成12年12月25日判決では、出願前に図面を特定の業者に開示した場合には秘密保持義務がない限り公知になると判断しました。

 東京高裁昭和60年3月29日判決では、発明の出願前に製品を第三者に納入したケースで秘密保持の約定がないことを理由に公知になったと判断されました。

 さらに出願前の製品の商談行為も法律上販売の申出行為に該当し、公知になるケースがありますので厳重に注意してください。

 御不明な点は藤本昇特許事務所に御相談下さい。

 

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