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弁理士藤本昇のコラム

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[コラム]最近最も注目すべき知財判決

2006年09月01日

[分 野]  意匠法

[論 点]  意匠法上の視覚とは何か

[背 景]
 意匠法第2条は、「意匠とは、物品(物品の部分を含む)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」と定義し、意匠の審査基準によると、「視覚に訴えるものとは、意匠登録出願されたものの全体の形態が、肉眼によって認識できるものをいう。よってその形態を肉眼によって認識できないものは、視覚に訴えるものとは認めない。」と規定している。

 従って、現行の意匠の審査、審判においては、全体の形態が数ミリの大きさからなる、いわゆる極小化物品については、肉眼にてその形態を認識できないものとして意匠法第3条1項柱書の規定によって意匠登録を受けることができないものとして拒絶されている。

 しかしながら、一方では登録第998189号意匠(発光ダイオード)等のように縦横の寸法が0.5mm×0.5mmの意匠のように極小化物品も数多く登録されている事実がある。

このことは、特許庁において必ずしもその審査基準に対応した審査がなされず視覚についての統一した審査運用がなされていないのが現状である。

[争 点]
 意匠法上の意匠の定義中、視覚に訴えるものの異議が審査基準規定のような「肉眼によって認識できるものに限る」 必要性があるのか。

[私の見解]
 私は、従前から成形技術や加工技術の発達によって精巧で極小化の物品が製作され取引されている現状(特に通信機器分野の部品等)に鑑みると現行の審査基準は不当であるとアピールしてきたのである。

[知財高裁判決・平成18年3月31日]
 知財高裁は、平成17年(行ケ)第10679号事件において、「意匠登録を受けることのできる意匠は、肉眼によって認識し得るものに限られるとした審決には、意匠法3条1項柱書、2条1項の解釈を誤った違法がある。」と判示した。すなわち、意匠に係る物品の取引に際して当該物品の形状等を肉眼によって観察することが通常である場合には肉眼によって認識できないものは意匠に該当しないが、当該物品の形状等を拡大して観察(拡大鏡、拡大図等)することが通常である場合には肉眼によって観察することが出来ないとしても意匠に該当するとの画期的な判決を言い渡した。

 このことは、現行の意匠の審査基準を違法と認定するとともに取引重視の判決となり、私の見解と同趣旨の判決となった。

 このことは、通信機器や産業機械等の部品の業界において、今後意匠戦略上極めて重視すべき判決の意義がある。

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